翻刻
【右側】
千【朱】
行としは波とゝもにや帰るらむ《見せ消ち:を|お》もかはりせぬわかのうらかな
すみよしを
新続古【朱】
すみよしときくに心はとゝまるをいかなる波の立帰るらむ
修行し侍りけるに大みねのちこのとまりにてあか
の水とりにたにへくたりけるに清水に月のやとれる
を見てよみはへりける 頼円法し
高ねより出ぬとみつる程もなくたにの清水に宿る月かな
竜門にてよめる 藤原清輔朝臣
千【朱】
山人のむかしのあとをきてみれはむなしき《振り仮名:ゆか|とこ千【朱】》をはらふ谷風
重保か家にてこれかれあつまりてよみたる歌
をこひてみ侍りて返すとてよみてつかはしける
土佐内侍
【欄外上部】
浜臣云此書には上の
わかのうらも此すみよし
も題詠とみゆるを新
続古今には羇旅の部
に入たり此たくひの
事いとおほかるへし
山家集下
あらし吹みねの木の間を
わけ来つゝ谷の清水に
やとる月かけ
朗詠 菅三品
石床留洞嵐空払
【左側】
《振り仮名:ひらこと|毎紙【左朱】》にひかりさすめることのはゝ玉の声せしたくひとそみる
皇太后宮大進
うつもれぬなにやなかれんひかりさす玉にたとへてみる《振り仮名:◦|はかり歟【朱】》かは
王昭君の心を 惟宗広言
心から玉ものくつとかくれにきなにかゑしまのうらみしもせん
平経正朝臣
平家物語【朱】
わきてこしのへの露ともきえすしておもはぬさとの月をみる哉
藤原親盛
ゑにかきてむかしの人はやつれぬるこのすかたをやかねてしりけん
李夫人をよめる 中納言長方
夫木 家集【朱】
中〳〵にちりなむ後のためとて《振り仮名:か|そ家【朱】》し《振り仮名:ほ|を【朱】》れし花のかほもはちけり
文集《振り仮名:◦|折【朱】》臂翁をよめる 藤原敦中
【欄外上部】
朗詠文史 白氏
遺文三十軸々々金
玉声竜門原上土
埋骨不埋名
此歌は平家物語巻八にみえたる歌にて平氏の人々つくしにて九月十三夜
都をこひてよまれし中に皇后宮のすけつねまさとてありさるをこゝに
玉昭君をよめりと
せしはいつれかもとな
らん又按に此集は
寿永元年の作なる
よし自序にみえて
けに平氏いまた都に
あるうちの事とおも
はるさるに平家物語
なるは寿永二年九月
とす尤不審也