翻刻
【右丁】
餅(もち)るゐを。銘々(めい〳〵)盆(ぼん)にてあつめける。遖(あつはれ)敵(てき)をち
らし飯(めし)。皆(みな)切(きり)めしといさみつゝ。時日(じゞつ)をうつ
さず馳来(はせきた)る。団子(だんご)の一(いち)もん餅屋(もちや)の一統(いつとう)。名言(なだか)
き見世(みせ)は大江戸(おほえど)の花(はな)に囀(さへづ)る鳥飼和泉(とりかひいつみ)。紅谷(べにや)
越後屋鈴木(えちごやすゞき)の餅(もち)るい。我(われ)さきばしと争(あらそ)ひて。折詰(をりづめ)
につめかくれば。つゞいて両国幾代之助蜜足(りやうこくいくよのすけあまたり)。江戸(えど)
一番(いちばん)と識(しら)したる大籏(おほはた)を。真先(まつさき)におし立(たて)。まん丸盆(まるぼん)に
備(そなへ)をたて。其勢(そのせい)凡(およそ)十五■(しふごせん)ばかり。大安(おほやす)うりに
【左丁】
うつたりけり。次(つき)に亀屋万年斎餅美(かめやまんねんさいもちよし)。瀬戸物町(せとものちやう)
の白玉汁粉郎錬好(しらたましるこらうねりよし)。浮世小路団五之助舂抜(うきよこうちたんごのすけつきぬき)。黒船町(くろふねちやう)
の花撰八千代(ばなよりやちゝよ)。金龍山(きんりうざん)の餅吉茅町(もちよしかやちやう)の喜八団子安売(きはちだんごやすうり)。
三河町(みかはちやう)の大福太郎(だいふくたらう)。芝神明(しばしんめい)には大々餅大夫(だい〳〵もちたいふ)。大木戸(おほきど)の
牡丹餅左衛門(もたもちさゑもん)。なんど偖(さて)国々(くに〳〵)より集(あつま)りし。中(なか)にとつ
ては誰(た)がありし。河内(かはち)の道明寺(どうみやうじ)糒(ほしい)の餅(もち)。日坂(につさか)の
蕨(わらび)の粉二郎(こじらう)小夜中山(さよのなかやま)の子育太郎(こそだてたらう)兄弟(けうだい)は。甘(あま)い
味(あぢ)にはたぐひなし。扨又(さてまた)都(みやこ)の其内(そのうち)に。おほき中(なか)には