翻刻
【右丁】
誰(た)がありし。丸山粟守軽焼(まるやまあはのかみかるやき)疱疾(ほうさう)の折(をり)の見舞(みまひ)
には。是等(これら)が上(うへ)はよもこさじ。偖(さて)北国(ほつこく)には高田(たかた)の四郎(しろう)
翁(おきな)の飴餅(あめもち)。加賀(かゞ)の餅(もち)には今坂(いまさか)の此(この)羊羹(やうかん)を始(はじめ)として
屈境(くつきよう)の手柄(てがら)のしれものら数百人(すひやくにん)ほど与力(くみ)したり
第四回
はるかおくれて阿部川黄名粉之助(あべかわきなこのすけ)。蔓見萬十郎(つるみまんしふらう)
猿(さる)が番場(ばんば)の柏(かしは)の餅蔵(もちざう)。女武者(をんなむしや)には於多福御前(おたふくごぜん)。
阿亀(おかめ)だん子(ご)。おてつぼた餅(もち)。草津(くさつ)の姥(うば)にいたるまで。
【左丁】
其外(そのほか)もちと名(な)のつくもの。金持(かねもち)家(いへ)もち。むぐらもち。
親(おや)もち。子持(こもち)。女房(ねうぼ)もち。荷物(にもち)歩行(かち)もち疝気(せんき)もち。
我侭(わがまゝ)ものゝ肝癪(かんしやく)もち。むしもち子(こ)どものたぐひを
はぶき。其名(そのな)を江戸(えど)の名物(めいぶつ)名代(なだい)ひともしるこや
しら玉(たま)もち。数(かず)も限(かぎり)りもあら玉(たま)の。春(はる)の若(わか)
餅(もち)彼岸(ひがん)もち。弥生(やよひ)の草(くさ)もち。千早振(ちはやふる)卯月(うづき)
八日(やうか)の卯(う)の葉(は)もち。端午(たんご)の粽(ちまき)かしは餅(もち)。氷室(ひむろ)の
雪(ゆき)のこほり餅(もち)。盆(ぼん)のぼた餅(もち)名(な)に高(たか)き。秋(あき)の