翻刻
【右丁】
独活(うど)。息(いき)を佛掌薯(つくいも)自然薯蕷(じねんじよ)や。長芋(ながいも)あ
ればみじかいも。あるは八百屋(やをや)の縁(えん)の下(した)。味方(みかた)の合図(あいづ)
を松蕈(まつだけ)と。茅花(つばな)の槍(やり)の穂先(ほさき)をそろへ。蘿蔔(だいこ)河(が)
岸(し)にぞ集(あつま)りける。飯米天皇(まんまてんわう)催促(さいそく)のめしにしたがひ
はせ来(き)たる。加勢(かせい)の麺類(めんるい)温飩(うどん)の輩(ともがら)。其外(そのほか)諸国(しよこく)の
早稲(わせ)晩稲(おくて)。古米(こまい)新米(しんまい)麦(むぎ)大豆(だいづ)。小豆(せうづ)大角豆(さゝげ)蕎麦(そば)
粟(あは)黍(きひ)稗(いえ)胡麻荏(ごまえ)菜種等(なたねとう)。凡(およそ)商売往来(しやうばいわうらい)に。
書(かき)のせたるも洩(もれ)たるも。廻船(くわいせん)数艘(すさう)に積(つみ)のぼせ。問屋(とひや)の
【左丁】
蔵(くら)に入(いれ)おくべき。所(ところ)せましと乗入(のりいり)たり。かゝる騒(さわぎ)を
聞(きゝ)つけて。農具(のうぐ)雑具(だうぐ)のともがらくた。左右(さいう)へたがひに
引(ひき)わかれ。思(おも)ひ〳〵に味方(みかた)につく。先(まづ)飯方(めしがた)へ加(くは)はりしは。鋤(すきの)
判官(はんぐはん)。鍬伴左衛門(くはばんざゑもん)。田桶三荷(たごやさんが)。鎌田又八(かまだまたはち)。竹把顕物(つまでけんもつ)。
米風車小藤太(たうみのことうだ)。臼井定道(うすゐのさだみち)。田藁俵太(たわらへうだ)が輩(ともがら)。桔槹(はねつるべ)戽(なげ)
桶(つるべ)。千石簾(せんこくとほし)の計畧(けいりやく)を。俵(たわら)につめておしきたる。勝手道(かつてどう)
具(ぐ)の面(めん)々は。釜頭飯朝(かまのかみめしとも)。包丁研政(ほうちやうとぎまさ)。湯桶入道(ゆとうにうどう)。鍋宗任(なべのむねとう)
真鋳薬罐底盛(しんちゆうやくはんそこもり)。鎌倉五合徳利(かまくらごんがふとくり)。杓子房刷景(しやくしぼうせつけい)を