翻刻
【右丁】
始(はじめ)として。夥(あまた)の雑具(ざうぐ)加勢(かせい)につく。そのほか駿河国(するがのくに)に
は竹細工(たけざいく)の一統(いつとう)。会津(あいづ)には塗物(ぬりもの)の一族(いちぞく)。瀬戸(せと)には磁器(やきもの)。
熱海(あたみ)には挽物(ひきもの)大門通(おほもんどほり)には金鉄鍋(きんてつなべ)の兵士等(つはものら)。われ
おくれじと馳来(はせきた)る。此混雑(このこんざつ)にあたり合(あひ)。薬罐銅壺(やくはんどうこ)
はくぼむを厭(いと)はず吸物椀(すいものわん)は欫(かく)るをいとはず。米櫃(こめびつ)を飛(とび)
こえ膳棚(ぜんだな)を躍(をどり)こえ。ころけてこわるゝなりもの類(るゐ)。あた
つた砕(くだ)くる瀬戸物(せともの)の。われも〳〵とかけ来(きた)る。爰(こゝ)に
筒井(つゝゐ)の春慶塗盆(しゆんけいぬりぼん)は。餅(もち)と酒(さけ)とにしたしめば。右(みぎ)
【左丁】
も左(ひだり)も捨(すて)がたく。宇治(うぢ)の茶法師(ちやほうし)と一手(ひとて)になり。天(てん)
目山(もくさん)のこなた。茶箪笥(ちやだんす)が嶽(たけ)のふもとなる。茶釜原(ちやかまがはら)
までおし出(いだ)し。咽(のど)の乾(かは)きし方(かた)へつかんと日(ひ)より遠(を)
見(み)てぞひかえける
第七回
軍師(ぐんし)葛飾稲穂頭早稲成(かつしか いなぼのかみ わせなり)は。口藁(さんたはら)の兜(かぶと)に。荒縄縅(あらなはおどし)の
蒲笥鎧(かますよろひ)を悉覆(ずつぷ)と着(き)。稗(ひえ)ものづくりの稭(しべ)の太刀(たち)に。
蔵前(くらまへ)の竹刺佩(たけさしはき)。陸奥米(みちのくまい)の白(しろ)く舂毛(つぎげ)のあら馬(うま)に。