翻刻
【右丁】
わらひ。餅有(もちあり)なんどが。逆意(ぎやくい)の企(くはだて)。何(なに)ほどの事(こと)あるべき。
ねばりけもなき腰(こし)よわども。味方(みかた)を師走(しはす)の
餅屋(もちや)の見世(みせ)。賃餅米(ちんもちごめ)の集(あつま)り勢(ぜい)。何百万石(なんびやくまんごく)
よるとても。皆(みな)きりもちに斬散(きりちら)し。霰(あられ)の如(ごとく)刻(きざむ)
も安(やす)し。虚実(きよじつ)も正(たゞ)さず討手(うつて)の沙汰(さた)。もし餅方(もちがた)に
きこえなば。狼狽(うろたへ)ものと侮(あなづら)れ。味方(みかた)の恥(はぢ)をかき餅(もち)
ならむ。これはまさしく餅有(もちあり)に。遺恨(いこん)のものゝ
焼(やき)もちに事。中(なか)をへだつる珠光餅(しゆくはうもち)なるべしと。此場(このば)を
【左丁】
うまく胡桃餅(くるみもち)。口(くち)あたりよく取(とり)もちは。餅(もち)に花胆(かたん)の
しりもちと。徳利(とくり)とさとりし諸白(もろはく)が。イヤ緑豆殿(ゆへなりどの)の
御言葉(おことば)を。兎角(とかく)申(まう)さばもどへに似(に)たれど。所存(しよぞん)を
のべぬも君(きみ)への不忠(ふちゆう)。餅(もち)るゐ互(たがひ)にいひあはせ。兵(へい)を
ねり餅(もち)。おしよせて。鬨(とき)を壱度(いちど)にあげ餅(もち)ならば。
味方(みかた)は必(かならず)もちあまし。餅(もち)につかんはかゞ美(み)もちに
かけて見(み)るがごとし。此期(このご)をすかさず明樽(あきだる)の。さか
よせにしく。餅有(もちあり)を。俘(とりこ)■すべき。御評議(ごひやうぎ)が