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コレクション: STAGE1

山中温泉縁記并ニ入浴之心得 - 翻刻

山中温泉縁記并ニ入浴之心得 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

に登らせ給ひけるを用明(ようめう)天皇の御年に至り勅(ちよく) 願(くはん)ありてこの江沼郡管生郷に宮うつし参らせ てより天平の今に至る迄凡百四拾余年になり はんへりぬと語りける行基は社檀(しやだん)の体(たい)といひ 所の景といひ心も言葉も及はれずいよ〳〵|渇(かつ) 仰の思をまし数日こゝに徘徊し給ひけり 折節巽の方にあたり日毎に紫(し)雲たなびけり行 基之を御覧しあやしみ給ひ此|瑞雲(ずいうん)をしるべに て深(み)山に分入たまへは万木千草生繁りて歩行 の道を失へり去とも行基は三明六通を得給ひ ける功験(こうけん)第一の人なりけれは法力を以てたゞ ちに分入給ふに此谷のほとりに年八旬に余る と思しき老僧只一人|額(ひたい)には雲の波を畳(たゝ)み眉に は八字の霜をたれ鳩の杖にすがりいと苦しげ なる体に行基を見給ひて汝何の用ありて茲(こゝ)に 来れるぞと有ければ行基対へて曰く我は八重 たつ雲の色にひかれて尋ね入ぬとそ申されけ る其時老僧のたまはく我は此山の奥に住者な り汝今こゝに来れる事願ふ所なり其いはれは 此谷に温泉あり是を世に弘(ひろ)め人間の病ひを癒(いへ)