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コレクション: STAGE1

山中温泉縁記并ニ入浴之心得 - 翻刻

山中温泉縁記并ニ入浴之心得 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

すべし此湯は温にして冷あり冷にして温なり 病ふともて癒すといふ事あるへからずと懇に 語りて此老僧はかきけす様に失たまふ 茲に狩野遠久といふ武士あり行基此次第を一 々語り給ひて則遠久を召倶して荊棘(けいそう)【読みは棘を棗と混同したか】をはらひ 岩をうかち尋求させ給へば彼老僧の教の如く 温泉沸出る事おひたゞし行基は軈て仮初の庵 を結ひいよ〳〵遠久をかたらひて湯けたを造 らしめ給ふ或夜行基の臥給ひける枕に夢ともな く現(うつ)ともなく前の老僧来り給ひて善哉や御辺に 告まうせし事能なし給ひぬ此湯にいる輩は諸 病癒すといふ事あるへからす我はこれ東方薬師 瑠璃光なり則此湯もとに跡をたれ人間の病苦 を救(すく)はんと示し給ふを驚き見給ひけれは紫磨 黄金の肌(はだ)なる光明無辺の医王善逝にてそいま そかりける 行基は歓喜(くわんぎ)の泪(なみだ)をしぼり忍辱(にんにく)の袖をまくり手に してやかて御堂を造立し国分寺として薬師の 尊像を刻(きざ)み安置し給へは諸人|踵(くびす)をつきて礼拝(らいはい) す其後狩野遠久此湯の主と成て此所に居住す