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コレクション: STAGE1

山中温泉縁記并ニ入浴之心得 - 翻刻

山中温泉縁記并ニ入浴之心得 - ページ 5

ページ: 5

翻刻

偖(さて)はるかた程経てのち承平(しよへい)の頃将門 叛逆(はんぎや)の 砌より此湯すたり果て跡方なくそ成にける去は 湯は土石に埋もれ在所はもとの深山になりか へりぬること年久し爰に治承のころほひ源三位 頼政高倉の宮をすゝめまうし平家大政入道を 滅ほさんと三井寺に引籠(ひきこも)りける時長兵衛尉長 谷部信連只一人宮に落上まりて討手(くつ□て)の輩(ともから)と散 々に合戦し痛手(いたて)を負て終に生捕れぬされども一 騎当千の大剛者なれは迚(とて)死罪を宥められける平 家の振舞ぞやさしき其後いく程なく平家悉く亡(ほろ) び果て終に源氏の世と成しかば信連を鎌倉に召 出され能登国能登郡を給ふ其頃信連鷹狩して此 山に入てみれは白鷺(しらさぎ)の足いたみぬるか葦原の流 に足を浸(ひた)し翅を濡(ぬら)してゐたりける暫く休らひ窺ひみるに 二八はかうなる女房の容顔美麗(ようがんびれい)なるが山がけより只一 人ぞ出(いで)きたりける信連是を見て汝いかなる者なれば たつきもしらぬ山中にたゞ一人だゝすめる事いといふかし と問れしに女答へて云ふやう我は此山に年月久しく 住者なり昔こゝに出湯ありて人間の病ひをいやす処 に中頃より退転(たいてん)せり是を歎く事せちなり今こゝの