みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE3

安政見聞誌 中 - 翻刻

安政見聞誌 中 - ページ 17

ページ: 17

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〇爰に本郷 新町に三河屋彦兵衛と いふ人あり味噌渡世にて最繁昌(もつともはんぜう) なりしが其妻とよ女は右二日の夜 家内皆|寝(いね)たるゆへ当方の男子に 小便させんと庭へ下けるに折ふし 右地震にて所那(なヤ)【「阿那」の誤字ヵ】と駚素(おどろきもと)の所へ立返ん とするに大じ震動(しんどう)強(つよく)して右糀室|開(ひら)き 穴の中へ滅込(めりこむ)ととよ女は小児を抱(いたき?)たる侭(まゝ)一声 |喚(さはひ)て落入けり是に駚(おどろき)夫彦兵衛下人迄立 騒(さはぎ)て赦(たすけ)んとする間(うち)四方の土|崩(くづれ)落柱の根 ゆるみ大家崩|倒(たふれ)諸品落重るゆへ残念ながら 赦(たすけ)る術(てたて)なく暫見合しけるに其家|崩(くつれ)倒たる上 四方に火災起(くはじおこり)しゆへ弥(いよ〳〵)以騒乱いやまし我身 すら最危(はなはだあやう)し右左する間夜はあけ火は 鎮りしか時々|余動(よどう)は止ず捨おき かたきにより乱崩たるを取除土中を 掘せけるに右とよ女は小児の足を把【誤字ヵ】 たる侭母子共に色変死|卒(はてたり) 彦兵衛は更也心なき下人迄 悲歎の泪(なみだ)にむせび竟葬(つひにとむらひ)をなし けり天災(てんさい)とは雖実(いへともじつ)に歎(なげく)に余(あまり)あり 如此なるを以其|騒乱(そうらん)の甚敷を知(しる)へし右 糀室の崩(くつれ)たる所は丸太を橋とし今|往来(わうらい)せしむる也