翻刻
△根津七軒丁に屑買(くづかい)にて平吉といふもの有妻かつ娘はると云は今年十七才にて
養女也妹くらは十六才実子也右はるは心ばへより見めもよく孝心深けれ共夫婦共
|邪見(じやけん)にして我子の愚(おろか)なるをしらず爰(こゝ)に夫婦|密談(みつだん)の事|何(いかに)して聞けん家主次兵へより
両人を呼寄(よびよせ)右はる女は孝心深く尚又義理有子也其妹くらは実子なれば売共
|故障(さはり)なし前金(てづけきん)おは受とりたる由也我方より返し理(ことはり)をいゝ遣(つかはす)べしと云に為方(せんかた)なく
腹立(はらたち)由金五両を姉はるにもたせやりける此時右地震也平吉方は一ばんに潰(つぶ)れ親子三人とも
崩家(くづれや)の下に成しが隣(となりに)家|火災起(くはじでき)て皆焼死けり姉はるは家主方に有て安全也是常〻
|継(まゝ)子をにくみ剰(そのうへ)遊女に売んとせし不実を諸天王の戒(いましめ)給ふ所也恐へし慎べし
△池の端松平出雲守様此度の地震より火災(くはさい)に付諸人難義ならんと茅(かや)丁二丁目
より根津七軒丁迄一軒に白米三斗金壱両宛御施行あり大領の君は他領
の窮民(きうみん)おも救(すく)はせ玉ふゆへ町家にても志(こゝろざ)しあらん人は巻中に顕(あらは)すごとく
施あり善根(ぜんごん)の種は一粒万倍といふは梵天帝釈(ほんてんたいしやく)諸天の御|守護(しゆご)による所也
凡崩て焼失にひとし△新丁ゟ新住迄大破損土蔵等崩れて無がごとし
△|箕輪(みのわ)辺大に震強(ゆりつよ)く凡崩れて焼失のごとし△|蛍沢(ほたるざは)日暮(びくらし)里千駄木|田端(たばた)迄
大破損崩所少し△|染井(そめゐ)巣鴨(すがも)辺破損あれ共崩所少し△王子|権現(ごんげん)并
|稲荷(いなり)社共本社無異|境内(けいだい)破損あり鰻縄手(うなぎなはて)元町辺まで破損あり
△|湯嶋(ゆしま)天神本社屋根破損其外にもあり△|妻恋(つまごひ)稲荷境内破損崩所なし
△神田明神破損あれ共|格別(かくべつ)のことなし△同所建部様上やしき内藤豊後様
上屋敷共表長家崩れ其外破損同所御台所丁同朋丁金沢丁此辺武家町家
共大破損崩所有△湯嶋通五丁目迄|表側(おもてがは)の分破損有共格別のことなし同所
|桜馬場(さくらばゝ)辺武家に崩所あり同北方金助丁|春(はる)木丁辺大破損崩所有
一銭三拾貫文 浅草御救小屋え施入 湯嶋壱丁目 沢の井
手拭三百筋 九兵衛
一味噌五十樽 五ケ所御救小屋え配分施入 本郷春木丁 大三津
新三郎