翻刻
一白米壱斗外ニ金弐朱ツヽ 地面内一般へ 駒込丁 酒店 高崎屋某
△本郷通大破損随分崩所有|駒込冨士(こまごみふじ)前丁同所|吉祥(きちじやう)院門前丁片丁|浅嘉(あさか)丁白
山辺大破損崩家有△|鶏声(けいせい)が窪(くぼ)御|駕篭(かご)丁辺大破損△遠坂丁同|身替(みかはり)地蔵
辺大破損崩所多し△上野御林同南方万足稲荷無異同所四軒寺丁の四方
小屋敷大破崩所あり
【丸に丗五】水道橋より小石川御門外大破損△水戸侯|泰(たい)平此三方武家町家大に崩れ
潰家多し同所西方立菱橋東方にて野中|飯塚(いひづか)牧|熊谷(くまがへ)荒(あら)川氏迄半丁余焼
此近辺武家大破損同所裏方町家崩所もつとも多し
【丸に丗六】|牛(うし)天神下半丁焼る△傳通院本堂其外破損同所裏門辺崩家多し
△|音羽護持(おとはごぢ)院大塚辺大破損崩家有水道丁辺大破損△目白不動△|鉄砲(てつほう)
坂|関口台(せきぐちだい)丁|雑司谷(さうしがや)丁四辻迄の間大破損武家民家共破損所多し△雑司谷
|鬼子母(きしぼ)神本堂無異同所門前破損△|鼠(ねづみ)山法印住居地破損|練馬(ねりま)道ゟ上板橋
△牛込矢来下の辺に東次といへるものあり是に狐(きつね)の魅(つき)て有しが右十月二日午刻
近辺の人に告て云やう今夜かならず天災あらん何れも心して危を逃給へ我は
安全の地へ立退んといふゆへ其訳を尋んと止る人〻を刎(はね)退つき倒(たふし)駈出し行方知
ず成けり因之心有人〻は荷物を取片付色〻用心の体を見て嘲笑つゝ狐つきの
戯言を信じ今より立騒ぐ事いとおかしと大に誹(そしり)たるに其夜彼地地震有しかば
東次の詞を始てさとり後悔せし人も多かりけり扨又地震しづまりて後もかの
狐魅の家に返らざる間はいまだ余動も有ならんと此事を伝へ聞たる人迄安き心は
なく猶又所〻の火災も有しことゆへ崩家又は傾たる所より荷物家財等を持出し
襖(ふすま)障子等を壁とし戸を以屋根となし些(わづか)に寒気を凌のみにて人〻枕にも着
ず夢の暮なるうち彼狐つき返きたりしかば人〻偖はもはや難もなかるべしと思ひ
狐魅の東次に足下は何所へ逃行しと問に微笑して凡俗の知事ならず等いうが各
安堵して其家を取繕素のことく家業をなしける尓(しかる)に右狐も脱(のき)て元の身と成しとぞ