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コレクション: STAGE3

安政見聞誌 中 - 翻刻

安政見聞誌 中 - ページ 20

ページ: 20

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△牛込白銀丁浅野勇次といふ人あり此人吉原大黒屋の喜瀬川と深く契り此程 打たへたるものからきせ川は切に文もて招ぜひ返たき要事の体成しが右勇次は日比 同所善国寺の毘沙天を信ずるゆへ参詣し其帰路に一人旅僧が善国寺ハ何方 なると尋けるゆへ一々の所也と教しが此僧示て曰足下今畢命の相あり総て陰 に帰て最不祥也と云ふ深く駭【読み:おどろき】何にし是を脱んと云に僧が曰足下は神仏を尊み 玉ふ体ゆへ是を進らせん若止事を得ず他行する事有共深更に及ばず帰宅すべし 尓ば泊事は弥以凶しと云に一礼を述て帰宅し右左する間種〻用事出来て浅草 へ行けるに其序なればとて喜瀬川方へ行酒宴し積談する間はや亥刻(よつどき)にも成しかば 不斗彼僧の云しことを思ひ出し暇を告るにきせ川は切に止けれ共終に爰を立出馬道 迄来る所右地震にて大に駭しが吉原の方を見るに暫の間に所〻に火災起崩落 物音の愴(すさま)じきゆへ急に取て返し大黒屋へ駈着(かけつけ)右きせ川外五人を救(たすけ)出しけり此夜 泊たれば決定非業に死べきに不思儀に命を脱たるは普信心の徳なるべし △|鈍(とん)亭主人話説す拙子が一度榎本氏の一夕話に駒込白山下なる質屋某の 丁稚(でつち)去卯年十月二日の黄昏に二階の板戸を鎖(とざし)せんとて上りたるが暫し有て 梯子(はしご)を下ながら打つぶやくやう今宵定て地震の愁有てしかも震動つよか らんと云独咬(ひとりごとし)なるを番頭聞も肯言ず不祥の事を云ぬるな灯(ともしび)せよ疾下(とくおり)よと 叱(しかり)こうして其侭に有けるに果て其夜の天災に家倉を破損し其家内辛 じて身を脱れ一同恙なかりけり去ば七日の間野宿せしをも傾たる家をとり 繕いづれも素の家居に入て各安堵せしが彼丁稚の云たるを思ひ出して 主人に一々の由を告るに主人も訝く思ひ招き尋けるに丁稚答て云 僕の父は信州の者にて常に語るには善光寺開帳の時地しん有たる日の夕方に 西方に白雲霞のごとくたなびき又東の方に藷(つくねいも)の如き雲出たり其夜彼国の 大地震也又暫有て元のごとき雲東西に出たり是恐揺返ならんと彼雲を見 たる徒には家財を広原にはこび身を竹林にひそめ居るに果して其夜も又大地