翻刻
平左衛門湯 源(もと)
《箱:十五歳 京水筆》
聞もらせり▲天神の社本町より西の方
四町余にありむかしは海辺(うみべ)に社(やしろ)ありしに
一とせ逆浪(なみあれ)ありて社を流したるに尊体(そんたい)
木作(もくさく)なれども磯(いそ)にとゞまりてながれさりしゆゑ
社を今の地に移(うつせ)しとぞそのゝち東都の
人此地に逗留のうち此神を信じて感(かん)
応(わう)を得たる事ありて財(ざい)をいだして社(やしろ)を
補(おぎな)ひけるに歳(とし)を歴(へ)て神祇(しんぎ)の博士(はかせ)こゝ
に来りゆゑありて尊体(そんたい)を拝(はい)して大に驚(おどろき)
我聞(われきく)むかし菅公(くわんこう)筑紫(つたし)に謫居(てききよ)まし〳〵
たる時手づから真像(しんぞう)七 躯(く)を彫刻(てうこく)ありて
《箱:水の湯》
《箱:ゆをひく所》
此ゆは
しほけ
あり
物を
むす所
《箱:十五歳京水筆》
海に流(なが)し給ふ六 躯(く)は流れ停(とゞま)る所
ありて其 真体(しんぞう)を祀(まつ)る所(ところ)の宮今に
在(あ)り其一 躯(く)はいづれの地に漂流(ひやうりう)せし
やさだかならざりしに此 尊像(そんぞう)こそ七 躯(く)の
一ツにして菅公(くわんこう)の神作なれと物語りけ
れば社人大に驚(おどろき)かゝる伝(つた)へは聞もおよば
ざれば何人(なにびと)の作にやとおもひしにさては
菅公(くわんこう)の神作にやおもふに此 社(やしろ)むかしは海
のほとりにありしをおもへば此 海辺(うみべ)にながれ
とゞまりしをひろいとりてその所に祀(まつ)り
しならんと是より里人も信をまして