翻刻
《箱:ふろのゆのもと》
《箱:此ゆのながれしほけなし》
《箱:十五歳 京水筆》
宮居とも重修(たてかへ)たるとぞ
▲来宮(きのみや)大明神 湯前の社の西三町ば
かり山の上にあり熱海の鎮守(ちんじゆ)なり
伝に曰(いわく)和同(わどう)三年六月十五日あたみの里(さと)
人 網(あみ)をおろして尺ばかりなる木造(もくぞう)を得(え)たり
魚にあらざれば海中にすてしに三度まで
網にかゝりしゆゑ大に怪(あやし)み岩の上に棄(すて)
おきしに和田村の農夫(のうふ)《割書:来宮の社宦|青木氏の先祖と云》【割書ルビ「きのみや」「しやくわん」】
これを拾(ひろ)ひとりて家に持かへりしに其家
の童(わらべ)に神の憑(のりうつ)て給ふやうわれはこれ五十(いそ)
猛(だけ)の命(みこと)也久しく海中にありしが時いたりて
《箱:左二郎のゆ》
《箱:十五歳 京水筆》
出現(しゆつげん)せり此地の北の山に七 株(しゆ)の楠(くすのき)あり
て潮(くしほ)の声(こゑ)聞(きこ)へざる所あり其地に
我をまつるべし永(なが)く村民を鎮護(ちんご)し
温泉(おんせん)に浴(よく)するものゝために恵(めぐみ)をたれて
霊湯(れいとう)の病に応(おう)ぜん事をまもるべしと
神託(しんたく)によりて今の所に祀(まつ)る自(みづから)来(きた)り
給ひしといふ心にて来宮(きのみや)と唱(とな)へたる毎(まい)
年六月十五日の夜あたみの浦にてとり
たる魚を供(くう)じ十六日に神輿を浜辺(はまべ)
の御 旅所(たびしよ)に移(うつ)して祭(まつ)りあり
今の神官青木氏の物語に木(き)の宮(みや)の