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校異源氏物語. - 翻刻

校異源氏物語. - ページ 22

ページ: 22

翻刻

【左丁】 【本文】 いつれの御時にか女御更衣あまたさふらひ給けるなかにいとやむことなきゝは 1 にはあらぬかすくれて時めき給ありけりはしめより我はと思あかり給へる御方 2 〳〵めさましきものにおとしめそねみ給おなしほとそれより下らうの更衣たち 3 はましてやすからすあきゆふの宮つかへにつけても人の心をのみうこかしうら 4 みをおふつもりにやありけむいとあつしくなりゆきもの心ほそけにさとかちな 5 るをいよ〳〵あかすあはれなる物におもほして人のそしりをもえはゝからせ給 6 はす世のためしにもなりぬへき御もてなし也かんたちめうへ人なともあいなく 7 めをそはめつゝいとまはゆき人の御おほえなりもろこしにもかゝることのおこ 8 りにこそ世(*一)もみたれあしかりけれとやう〳〵あめのしたにもあちきなう人のも 9 てなやみくさになりて楊貴妃のためしもひきいてつへくなりゆくにいとはした 10 なきことおほかれとかたしけなき御心はへのたくひなきをたのみにてましらひ 11 給ちゝの大納言はなくなりてはゝ北の方なんいにしへの人のよしあるにておや 12 うちくしきしあたりて世のおほえはなやかなる御方〳〵にもいたうおとらすな 13 にことのきしきをももてなしたまひけれととりたてゝはか〳〵しきうしろみし 14 【注釈上段】 [青表紙本] ➋給へる―たま ひつ(| |────)(へ)る大 ❹のみ  ―み横―ナシ肖三 ❻おもほして―おほゝして肖三 ❾もてなやみくさ―もてなや み( |◦)くさ池 ❿ひきいてつ へく―ひきいてつへう肖三 ❿なりゆく―なり( |◦ ◦  )ゆく池 ⓫かたしけなき―かたしけなき《振り仮名:事おほかれ||──────────》大 ⓬ちゝ の―ちゝ《振り仮名:の||──》三 ⓬大納言はなくりて―大納言はかな くなりて横 ⓬いにしへの人―いにしへ人肖 ⓭いた う―ナシ肖三 ⓮うしろみ―御うしろみ肖三 [河内本] ➊給ける―たまふ河 ❻えはゝからせ―は  ゝからせ河 ⓬いにしへの人―いにしへ人河 [別本] ➊給ける―給国 ➋ありけり―おはしけり陽  ➋はしめより―本より御 ➋御方〳〵―御かた〳〵 【注釈中段】 は陽国―かた〳〵は麦 ❸おとしめ―おもひをとしめ 御陽 ❸そねみ給おなしほと―そねみ給ける陽 ❸更 衣たちはまして―かういたちなとは陽―かういたちな とまて国 ❹やすからす―ナシ陽 ❹つけても―つけ つゝもやすからぬ事おほく思ひつむるまゝに陽 ❹の み―ナシ陽國 ❹うらみ―なけき陽 ❺ありけむ―ナ シ陽 ❺ゆき―ゆきて陽 ❺もの心ほそけに―物心ほ そけにて御国―ものこゝろほそけに思ひ陽 ❺さとか ち―さとかちに国 ❻あかす―ナシ国 ❻人―人〳〵 国 ❻えはゝからせ―はゝからせ別 ❼ためしにも― ためしとも陽 ❼かんたちめ―上達御 ❼うへ人―天 上人御国 ❼あいなく―ナシ国 ❽そあめつゝ―そは めて国 ❽まはゆき―まえゆき御 ❽御おほえ―おほ え国麦 ❽なり―かな陽国 ❾こそは国 ❾世 も―世の御国―世は陽 ❾あしかりけれと―あしかり けれは御―あしきこともいてきけれともてなやむほと に陽―あしくはなりけれと国 ❾あめのした…もてな 【注釈下段】 やみくさに―あめのしたのあつかひくさに陽 ❾あち きなう―あひなう国 ❿なりて―て国 ❿ひきいてつ ―ひきいつ国 ❿いと―いとゝ国 ⓫こと―ことも国 ⓫おほかれと―おほかりけれと人の御おほえ麦 ⓫御 心はへ―御心さし陽国 ⓫たくひなきをたのみて― たくひなきひとつをなくさめにて陽 ⓬大納言は―大 納言陽―大納言も国 ⓬なくなりて―なくなり給て陽 ⓬なん―なんくしたまへる国―そ麦 ⓬人のよしある にて―よしある人にて陽―人のよしあるまて麦 ⓭う ちくしさしあたりて―なしとても国 ⓭はなやかなる 御方〳〵にもいたう―はなやかにおや〳〵うちくし給 える人〳〵にも国 ⓮きしきをも―をりふしにも陽― きしきにも国 ⓮たまひけれと―たまふれと国 ⓮う しろみし―御うしろみゑ御―うしろみも陽―うしろみ 国      きりつほ           五

現代語訳

【本文】 いずれの御代であったか、女御や更衣が大勢お仕えしていた中で、それほど高い身分ではないが、特別に寵愛を受けていらっしゃる方がいた。最初から「自分こそは」と自負していらっしゃった御方々は、その方を憎々しいものとして見下し、妬んでいらっしゃった。同じ身分やそれより低い身分の更衣たちは、なおさら心穏やかではなく、朝夕の宮仕えにつけても、人の心をかき乱し、恨みを重ねることであったのだろうか、その方はたいそう病気がちになり、気弱になって里下がりすることが多くなるのを、帝はますます物足りなく、いとおしい人だとお思いになって、人の非難もお気になさらず、世間の語り草にもなりそうなご寵愛ぶりである。上達部や上人なども、無意味に目を見張って、たいそう眩しい人のご寵愛ぶりである。唐土でも、このようなことが原因で世も乱れ、悪いことになったというように、だんだん天下にも都合の悪いことが人々の悩みの種となって、楊貴妃の例も引き合いに出されるようになってくると、まことに体裁の悪いことが多いけれど、恐れ多い帝のお心遣いが他に類のないことを頼みにして、宮仕えしていらっしゃる。父の大納言は亡くなっていて、母北の方だけが、昔からの由緒ある人で、何かにつけ美しく振る舞って、世間での評判が華やかな御方々にもそれほど劣らず、何事の儀式でも立派にお世話なさったけれど、特別にしっかりした後見役が 【注釈部分】 この頁では青表紙本、河内本、別本の異同が詳細に記録されている。源氏物語の桐壺巻の冒頭部分の校異を示している。

英語訳

【Main Text】 In which imperial reign was it? Among the many imperial consorts and court ladies who served at court, there was one who, though not of the highest rank, was especially favored by the emperor. The imperial consorts who had from the beginning thought "I am the one" regarded her with hatred, looking down upon and envying her. The court ladies of the same rank or lower were even more troubled, and in their morning and evening court service, they must have stirred up people's hearts and accumulated resentment, for she became quite sickly and weak-hearted, frequently returning to her family home. The emperor found this increasingly unsatisfactory and pitiful, paying no heed to people's criticism, showing such favoritism as might become the talk of the world. Even the high court nobles and senior courtiers looked on with meaningless amazement at such dazzling imperial favor. Just as in China such things caused the world to fall into disorder and come to ruin, gradually throughout the realm inconvenient matters became sources of people's distress, and when the example of Yang Guifei began to be cited, there were many unseemly incidents. Yet relying on the emperor's incomparably gracious heart, she continued her court service. Her father, the Major Counselor, had died, and only her mother, the Northern Lady, remained—a person of ancient noble lineage who conducted herself beautifully in all things and managed ceremonies splendidly, not greatly inferior to the most illustrious ladies at court, though she lacked any particularly reliable patron. 【Annotation Section】 This page records detailed textual variants among the Aobyōshi manuscript, Kawachi manuscript, and other versions. It shows the textual criticism of the opening section of the Kiritsubo chapter of The Tale of Genji.