翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション3

繪本不盡泉 - 翻刻

繪本不盡泉 - ページ 14

ページ: 14

翻刻

  犬悦(けんゑつ)上戸(しやうご) つゐんしのもとにてゑもいえぬ事 ともしちらしとつれ〳〵草(くさ)に かけるは今(いま)の謂所(いわゆる) 犬悦(けんへつ)なり夫(それ)嘔吐(へど)は 酒徒(しゆと)のいきおひきはまる ところにして武夫(ぶし)の 討死(うちし)にをなしまた 一種(いつしゆ)多(おゝ)く呑(のま)ん ために指(ゆび)にて 咽喉(のど)を弄(ろう)し 強(しき)りに嘔吐(へど)を なし扨(さて) 飲(のみ)に着(つく)ものあり 是(これ)は剛飲(かうゐん)とは いふべからず 腹中(ふくちう)をしばらく 酒食(しゆしよく)の宿(やと)となし やがて追出(おいだ)すに同(おな)し かるへし全体(ぜんたい)嘔(ゑづきを)なすも 酒客(しゆかく)の一 興(きやう)といへども 尾籠(ひらう)のふるまひ強飲(かうゐん)の あるましき    仕業(しわざ)なり 【つれ〳〵草に書ける : 徒然草175段。酒飲みってひどすぎると書き連ねているうちのひとつ。「築地・門の下などに向きて、えもいはぬ事どもしちらし」】

現代語訳

犬悦上戸 『徒然草』にある「えも言えぬ事ども散らし」と連れ立って草に書かれているのは、今でいう犬悦である。そもそも嘔吐は酒飲みの勢いが極まるところであって、武士の討ち死にに等しい。また一種、多く飲もうとして指で咽喉をいじり、しきりに嘔吐をなして、さて飲みにかかる者がある。これは豪飲とは言うべきではない。 腹中をしばらく酒食の宿とし、やがて追い出すのと同じことであろう。全体、嘔吐をなすのも酒客の一興といえども、下品な振る舞いであり、豪飲家のあるまじき仕業である。

英語訳

The Disgraceful Drinker What is written in the "Tsurezuregusa" as "doing unspeakable things and scattering them about" refers to what we now call a disgraceful drinker. Indeed, vomiting is the point where a drinker's momentum reaches its peak, equivalent to a warrior's death in battle. There is also a type of person who, in order to drink more, sticks their finger down their throat, forcibly vomits, and then returns to drinking. This cannot be called heavy drinking. It is the same as temporarily making one's belly a lodging for food and drink, only to soon expel it. Although vomiting may be considered one of the diversions of drinkers, it is vulgar behavior and an unseemly act for a heavy drinker.