翻刻
【右頁上段】
実(じつ)の子を愛(あい)しいつくし
みて継子(まゝこ)の閔子騫(びんしけん)を
悪(にく)みてとにかく父(ちゝ)へあし
くとりなしそしり閔子
騫にさま〴〵とつらく
あたりけれども少(すこ)しも
【右頁下段】
にもより候 事(こと)なれば
一概(いちがい)には申 難(がた)く候
得とも中(ちう)以下(いか)之
町人(てうにん)商人(あきんど)風情(ふぜい)は芸(げい)
能(のう)ありてほめらるゝ
方(かた)よりは無芸能(むげいのふ)にて
【左頁下段】
商売(しやうばい)一向(いちむき)の外(ほか)には
何(なに)も知(し)らぬ男(おとこ)なりと
そしらるゝ者(もの)が芸能(げいのう)
ありとほめらるゝ人
よりも多(おほ)くは先祖(せんぞ)の
家(いゑ)をよくたもち身体(しんだい)
現代語訳
【右頁上段】
実の子を愛していつくしみ、継子の閔子騫を憎んで、とにかく父に悪く言いつけ、そしって、閔子騫にさまざまとつらく当たったけれども、少しも
【右頁下段】
によるものであるから、一概には申し難いけれども、中流以下の町人や商人風情は、芸能があってほめられる方よりは、無芸能で
【左頁下段】
商売一筋の外には何も知らない男だとそしられる者が、芸能ありとほめられる人よりも多くは先祖の家をよく保ち、身代