東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

撫育草 - 翻刻

撫育草 - ページ 43

ページ: 43

翻刻

【右頁上】 さりうちの肉(にく)を剉(きざみ)て炒(い)るべし 〇 疵(きず)口に風(かせ)のあたるを大いにいむべし 〇 韮(にら)を搗(つき)しぼり汁(しる)をとり一はいづゝ 七日め〳〵に飲(のみ)七々四十九日 迄(まで)に七 盃(はい)を 呑(のむ)ときは毒(どく)うちへ入(い)る事なし 〇 又(また)升麻(しやうま)葛根湯(かつこんとう)を飲(のむ)はなをよし 〇 犬(いぬ)に咬(かま)れし跡(あと)禁忌(とくいみ) 胡(こま) 麻仁(あさのみ) あづき あぶらけ類(るい) 里(さと)いも さうめん ねぎのびる あさつき わけぎ ちもと かりひる 生魚(なまうを) 川魚(かわうを)此 外(ほか)すべてくさき にほいあるもの 右(みぎ)は百日(ひやくにち)があいだ急度(きつと)くふべからず 酒(さけ) 是は至(いたつ)て大毒(だいどく)なり一年いむべし 犬肉(いぬのにく)是は一 代(だい)くふべからず大にいむ 〇又 犬(いぬ)にかまれたるによきくすりは 【左頁上】  大坂 堂嶋(どうじま)舟大工(ふなだいく)町 京(きやう)屋 宗吉殿(そうきちどの) と申 方(かた)に売薬(ばいやく)に致(いた)され候よし此くすり 至(いたつ)て妙薬(みやうやく)の趣(おもむき)也 予(よ)が知音(ちいん)の者(もの)先年(せんねん)犬に かまれ難義(なんぎ)の時(とき)に此 薬(くすり)を用(もちひ)てすぐさま 治(ぢ)し申候に付こゝに記(しる)し候なり 【罫線あり】 鼠(ねづみ)の咬(かまれ)たるに 猫(ねこ)のよたれ又(また)糞(ふん)を【枠外上部に】鼠 ぬり付(つけ)てよし 〇又かまきり虫(むし)のかげぼしを飯(めし)つぶ にてねり付けてよし 〇 又(また)鮒(ふな)の生(なま)なる肉(にく)をすり付てよし 〇 又(また)梅(むめ)のたねを酢(す)にてすり付(つけ)てよし △鼠(ねづみ)の小便(せうべん)目(め)に入(いり)たるに猫(ねこ)のよだれを さし入(い)れてよし 【罫線あり】 猫(ねこ)の咬(かみ)たるに 薄(はつ)荷の汁(しる)をぬるべし【枠外上部に】猫 〇 犬(いぬ)の毛(け)をやき付(つけ)るもよし〇又犬の糞(ふん)をぬるもよし 【右頁下】 にてこれあらば左右(ささう)の腕(かひな)のうち臂(ひぢ)の折(をり)かゞみ と肩(かた)との真中(まんなか)子(こ)どもなどの力(ちから)こぶといふ所(ところ)へ とくと口(くち)をつけ強(つよ)く吸(すふ)なり是 療治(りやうぢ)の法(はう)なり 軽(かろ)きは血(ち)出(いづ)る重(おも)きは黒血(くろち)出(いづ)る二口三口ほどづゝ血(ち)出(いづ)る なり血(ち)の出(で)やむを期(ご)とす尤(もつとも)外(ほか)の病(やまひ)はしらず丹毒(はやくさ) に右の療治(りやうぢ)をなせば何(なに)ほど重(おも)き丹毒(はやくさ)にても 治(ぢ)する事 神妙(しんめう)なり十四経(じうしけい)手之(ての)太陰(たいいん)肺経之(はいけいの) 図(づ)にていふ時(とき)は雲門(うんもん)尺沢(しやくたく)のあい間(あいだ)侠白(けうはく)といふ図(づ)の 少(すこ)し内(うち)に当(あた)る也 嗚呼(あゝ)宜(むべ)なるかな此(この)術(じゆつ)の妙(めう)なる 事(こと)用(もち)ひて知(し)るべし但はやくさの時早速右の療治を  なせばぢする事うたがひなししかれともかくべつりやうじておくれに成は  すふてもち出ぬ事も有べしその時はかの所をひらばり【注①】かかみそり  にて少しはね切りすふてみるべし 【罫線あり】 五疳(ごかん)には【上記文字を四角で囲む】おゝばこの根(ね)葉(は)実(み)ともに くろやきにし味噌(みそ)に入(い)れまぜう鰻(うなぎ)のかば やきにつけて用(もち)ゆ 【罫線あり】 舌(した)胎(しと)【注②】には【上記文字を四角で囲む】昆布(こんぶ)を黒焼(くろやき)にし紅粉(べに) 【注① 平針=外科治療に用いる平たく小さい刃物。両刃で先がとがっている。】 【注② 「舌しとぎ」のこと。】 【左頁下】 ときつけぬりてよし 【罫線あり】 疱瘡(ほうさう)には【上記文字を四角で囲む】あづき 黒豆(くろまめ)ゑんどうと 甘草(かんざう)少し加(くは)へ水(みづ)にて煮(に)て毎日■【「かん」ヵ】心に 此 汁(しる)をのみ豆(まめ)をくふ時(とき)は妙(みやう)にほうさうかろし ほうさうはやる時(とき)に呑(のみ)おくべし至(いたつ)てかろし 【罫線あり】 夜(よ)なきするに【上記文字を四角で囲む】灯心草(とうしんさう)もぐさをやきて 灰(はい)をとり乳(ち)の上(うへ)に付(つけ)てのましむ 【罫線あり】 虫歯(むしば)には【上記文字を四角で囲む】昆布(こんぶ)とこんこんぶの塩(しほ)と烏賊(いか) の甲(かう)此 三品(みしな)を等分(とうぶん)に黒(くろ)やきにいたし 付(つく)べし〇又しやうちうにて口(くち)すゝぎふくむ もよし〇又 芹(せり)のしぼり汁(しる)を少し 耳(みゝ)へ入(い)れてよし 【罫線あり】 聤耳(みゝだれ)には【上記文字を四角で囲む】大根(だいこん)のしぼり汁(しる)をこより のさきにつけて入れてよし〇又 熊(くま)のゐを ときて入れてよし〇又せみのぬけからを

現代語訳

【右頁上】 (杏仁の)皮を剥いだ肉を刻んで炒るべきです。 〇 傷口に風が当たることを大いに避けるべきです。 〇 韮を搗いて絞り汁を取り、一杯ずつ 七日おきに飲み、七々四十九日までに七杯を 飲むときは毒が体内に入ることがありません。 〇 また升麻葛根湯を飲むのはなお良いです。 〇 犬に咬まれた跡の禁忌 胡麻 麻の実 小豆 油気のある類 里芋 素麺 ねぎのびる 浅葱 分葱 茗荷 雁疱瘡 生魚 川魚 この他すべて臭い 匂いがあるもの 右は百日の間、絶対に食べてはいけません。 酒 これは極めて大毒です。一年間避けるべきです。 犬肉 これは一生食べてはいけません。大いに禁忌です。 〇また犬に咬まれたときに良い薬は 【左頁上】 大坂堂島舟大工町の京屋宗吉殿 という方が売薬をされているとのこと。この薬は 極めて優れた薬のようです。私の知人が先年犬に 咬まれて困った時にこの薬を用いてすぐさま 治したということでここに記します。 【罫線あり】 鼠に咬まれたときには 猫のよだれまたは糞を 塗り付けて良いです。 〇またかまきりの影干しを飯粒 にて練り付けて良いです。 〇また鮒の生の肉をすり付けて良いです。 〇また梅の種を酢にてすり付けて良いです。 △鼠の小便が目に入ったときには猫のよだれを 差し入れて良いです。 【罫線あり】 猫に咬まれたときには 薄荷の汁を塗るべきです。 〇犬の毛を焼いて付けるのも良いです。〇また犬の糞を塗るのも良いです。 【右頁下】 (丹毒で)これがあれば左右の腕のうち肘の折れ曲がり と肩との真ん中、子どもなどの力こぶという所へ しっかりと口を付け強く吸うのです。これが療治の法です。 軽いものは血が出る、重いものは黒血が出る。二口三口ほどずつ血が出る のです。血の出るのが止むのを目安とします。もっとも他の病気は知りませんが、丹毒に 右の療治をなせば何ほど重い丹毒でも 治すことは神妙なことです。十四経手の太陰肺経の 図でいう時は雲門尺沢の間、侠白という図の 少し内側に当たります。ああ、なるほど、この術の妙なる ことは用いて知るべきです。ただし丹毒の時、早速右の療治を なせば治すことは疑いありません。しかしながら、かなり療治が遅れになっては 吸っても効果が出ないこともあるでしょう。その時はその所を平針(外科用の小刀)で 剃刀にて少し切り開いて吸ってみるべきです。 【罫線あり】 五疳には【四角囲み】大葉子の根・葉・実ともに 黒焼きにし味噌に入れ混ぜ、鰻の蒲 焼きに付けて用います。 【罫線あり】 舌苔には【四角囲み】昆布を黒焼きにし紅粉と 【左頁下】 溶き混ぜて塗って良いです。 【罫線あり】 疱瘡には【四角囲み】小豆、黒豆、豌豆と 甘草少し加え水にて煮て毎日安心して この汁を飲み豆を食う時は見事に疱瘡が軽くなります。 疱瘡が流行る時に飲んでおくべきです。極めて軽くなります。 【罫線あり】 夜泣きするのには【四角囲み】灯心草の艾を焼いて 灰を取り乳の上に付けて飲ませます。 【罫線あり】 虫歯には【四角囲み】昆布と昆布の塩と烏賊 の甲、この三品を等分に黒焼きにして 付けるべきです。〇また焼酎にて口すすぎ含む のも良いです。〇また芹の絞り汁を少し 耳へ入れて良いです。 【罫線あり】 耳だれには【四角囲み】大根の絞り汁を紙縒り の先に付けて入れて良いです。〇また熊の胆を 溶いて入れて良いです。〇また蝉の抜け殻を

英語訳

【Right Page, Upper】 (For apricot kernels) peel the skin from the flesh and chop and roast it. 〇 Greatly avoid letting wind touch the wound. 〇 Pound leeks and extract the juice, drinking one cup each every seven days, drinking seven cups in seven times seven (49) days. When you do this, poison will not enter the body. 〇 Also, drinking Shōma-Kakkon-tō (Cimicifuga and Pueraria Decoction) is even better. 〇 Dietary prohibitions after being bitten by a dog: Sesame, hemp seeds, adzuki beans, oily foods, taro, sōmen noodles, scallions, leeks, Japanese bunching onions, myōga ginger, wild rocambole, raw fish, river fish, and anything else with a foul smell. The above must absolutely not be eaten for one hundred days. Alcohol - this is extremely poisonous. Avoid for one year. Dog meat - this must never be eaten for a lifetime. Greatly prohibited. 〇 Also, good medicine for dog bites is 【Left Page, Upper】 Kyōya Sōkichi-sama of Dōjima Funadaiku-chō, Osaka, who sells medicine. This medicine appears to be extremely excellent. When an acquaintance of mine was bitten by a dog years ago and was in trouble, he used this medicine and was immediately cured, so I record it here. [Line] For rat bites: Apply cat saliva or excrement. 〇 Also, dried praying mantis mixed with rice paste is good. 〇 Also, rubbing raw crucian carp flesh is good. 〇 Also, rubbing plum pits with vinegar is good. △ When rat urine gets in the eyes, put cat saliva in. [Line] For cat bites: Apply mint juice. 〇 Burning dog hair and applying it is also good. 〇 Applying dog excrement is also good. 【Right Page, Lower】 If there is (erysipelas), place your mouth firmly on the middle point between the elbow bend and shoulder of either arm, at what children call the "muscle bump," and suck strongly. This is the method of treatment. For mild cases, blood comes out; for severe cases, black blood comes out. Blood comes out in two or three mouthfuls. Stop when the blood stops flowing. While I don't know about other diseases, for erysipelas, if you perform this treatment, no matter how severe the erysipelas, it will be miraculously cured. In terms of the Fourteen Meridians, the Lung Meridian of Hand Taiyin, this corresponds to slightly inside the point called Xiabai, between Yunmen and Chize. Ah, indeed, the wonder of this technique should be known through practice. However, for erysipelas, if you perform this treatment immediately, cure is certain. Nevertheless, if treatment is considerably delayed, sucking may not be effective. In that case, make a small incision at that spot with a hirabari (surgical blade) or razor and try sucking. [Line] For the five types of malnutrition: Plantain roots, leaves, and seeds burned to charcoal, mixed with miso, and applied to grilled eel. [Line] For tongue coating: Burn kelp to charcoal and mix with rouge powder 【Left Page, Lower】 and apply. [Line] For smallpox: Adzuki beans, black beans, peas with a little licorice added, boiled in water and drunk daily with peace of mind. When drinking this broth and eating the beans, smallpox becomes wonderfully mild. Should be drunk when smallpox is epidemic. It becomes extremely mild. [Line] For night crying: Burn rush pith moxa and take the ashes, apply to breast milk and give to drink. [Line] For tooth decay: Equal parts of kelp, kelp salt, and cuttlefish shell, all three items burned to charcoal and applied. 〇 Also rinsing and holding shōchū in the mouth is good. 〇 Also, putting a little water dropwort juice in the ear is good. [Line] For ear discharge: Soak the tip of a paper twist in daikon radish juice and insert. 〇 Also, dissolving bear bile and inserting is good. 〇 Also, cicada molts...