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まつさへこよびは一夜とまれと。かなに仰られける。な
らずあの寺へ参り給ふなと二心なきいけんをくり返
し申ける。夫はさる者にて手を打てわらひ。さりとては
仏なり。なんぢがかくいふもことはり也。よく思ひ見よ。いかなる
たんな
ものにてもわれをたのむ且なの女房に。なれ〳〵し
しゆつけ
げなく。一夜とまれとは中〳〵出家の身にていひがたし。
こんじやうどしやう
よし一休和尚と枕をならべは今生後生のうつたへ成べし
我等をかね侍らず。悪き行て一夜あそび給へるに〳〵の
誓言ぞ我等のねたみ心はなしと申せば。左あらば引かへ
し参るべし御よろこび有べしと申ければ。つそぎ参り
て。ゆる〳〵と一体和問をなぐさめ給へと申ければ。女房
よろこび一番所へ立こもり白粉口紅きつねのばけ
たるごとく引つくろひ衣裳をかざりていそぎ輿にうち
我一休へこそ参りけれ一休はや寝給ひしに門ほ
と〳〵と招一休おどろき立出給へば彼女いかにてほそ
〳〵としたる聲にて。さきには是非と仰られければ
夫の心うるゞはしくてふりきり立かへりし。あまり御残た
くて夫にいとまをこひ候へは苦しからしと申侍るゆへどまへどま
りかけて御はつかしながら参りけると申ければ。一休体や
〳〵もはやいやにて候御帰あれ先程はこなたへ心かふし
り候が。はや心かゝらず。はや御かへりあれ〳〵とて門
戸かたくしめて音もせず。さりと
戸かたくしめて帝もせずざりとては御なぶつも誰かと