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【OCRのままです】
申けれ共あへて音もせず。是非なくかへりて夫にしか
〳〵と語りければ。さあらんと思ひけることよとて。
らひて。天下の老和尚なり心のうごく時はうごかし。う
ごかざればうごかし給はず。もいやとはみじかし。誠に行
水のことき御心やいさぎよし〳〵とかく凡人にてはなし
とていよ〳〵たつとびけると也
【堺にてふくとうにゑひて 死 したるしの事】
『七』〔堺(さかひ)〕にての事なりしに一休和尚へ常にまいりて御心
やすく御意を得たる又次郎といふ町人有ける。或(ある)時 河(ふく)
豚汁(とうじる)をしたゝか食(くらい)てけるが殊外(ことのほか)に酔(えい)て。終に其日の内
に死(し)しけるが。今はの時に申置けるは我世にありし時は死
ぬる事はいつの比ぞやと思ひけるなれば。後世とてねかひ
を化し事もなし。され共一休ね翁へ常にしかう申御物
語共うけたまはりし結縁あれば引導をもたのみ奉
れがゝる不応なる死を仕けると。さこそあはれにもお
ぼしめすらめがならずといひ置て終にむなしく成にけ
り妻子眷属なげきかなしみ遺言の通に一休に一休心寺
へ申上ければ。いとやすき事也扨々不便の仕合と便られ
ける然処へはや時分もよく候間一休御心をあふぎた
てまつるとて。再三人をこしければ。一休おほせられける
はいや〳〵我等罷出るにも及ばず引導をつぶさに書て
つかはすべし。誰にてもよみあげてほふむれよと仰られを
れば妻子(さいし)なげきて遺言(ゆいごん)にて候間。ひらに御出下されよ。