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コレクション: とりあえず気になる

一休はなし(寛文八) - 翻刻

一休はなし(寛文八) - ページ 89

ページ: 89

翻刻

【OCRのままです】 申けれ共あへて音もせず。是非なくかへりて夫にしか 〳〵と語りければ。さあらんと思ひけることよとて。 らひて。天下の老和尚なり心のうごく時はうごかし。う ごかざればうごかし給はず。もいやとはみじかし。誠に行 水のことき御心やいさぎよし〳〵とかく凡人にてはなし とていよ〳〵たつとびけると也 【堺にてふくとうにゑひて 死 したるしの事】 『七』〔堺(さかひ)〕にての事なりしに一休和尚へ常にまいりて御心 やすく御意を得たる又次郎といふ町人有ける。或(ある)時 河(ふく) 豚汁(とうじる)をしたゝか食(くらい)てけるが殊外(ことのほか)に酔(えい)て。終に其日の内 に死(し)しけるが。今はの時に申置けるは我世にありし時は死 ぬる事はいつの比ぞやと思ひけるなれば。後世とてねかひ を化し事もなし。され共一休ね翁へ常にしかう申御物 語共うけたまはりし結縁あれば引導をもたのみ奉 れがゝる不応なる死を仕けると。さこそあはれにもお ぼしめすらめがならずといひ置て終にむなしく成にけ り妻子眷属なげきかなしみ遺言の通に一休に一休心寺 へ申上ければ。いとやすき事也扨々不便の仕合と便られ ける然処へはや時分もよく候間一休御心をあふぎた てまつるとて。再三人をこしければ。一休おほせられける はいや〳〵我等罷出るにも及ばず引導をつぶさに書て つかはすべし。誰にてもよみあげてほふむれよと仰られを れば妻子(さいし)なげきて遺言(ゆいごん)にて候間。ひらに御出下されよ。