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思てぬさきやほどけならん
思はぬさきやほどけなるらん
とあそばしければ。一休よろこび給ひてどりあへ
ず一首侍り給ひける
いまはゝやこゝろにかゝる雲もなし
月といるへき山しなけれと
と侍りていよ〳〵御工夫尤も〳〵とてかへり給ひける
となりたり
となか
ぶつほう
【新右衛門仏法物語の事 付 扇に五戒或事】
『十』或時蛙川の新右衛門来りて仏法ばなしなどしてあ
そびゐけるに一休の仰られけるはいま時の出家こゝろさし
うすく仏は五百戒をさへたもち給ひしとかやせめて其あ
とりの五戒をば。よくたもつぺきことなり。とのたまへば新右衛門
申されけるは。まことに沙門は申におよはず。俗の上にもせ
めて五戒はたもちたき事に候と申すに一休いかぬ
俗は是非なき事也出家にはもたせたく思ふ也去なる
目に見え。耳に聞ゆるもの。五戒をたもつ事なし。わづか
なる一尺の扇子さへ五戒をやぶる上は。まして僧俗生
とし生るものとして五戒をたもたざるにはことはり也と仰
られければ新右衛門申されけるは此扇子も五戒をやは。
り申や。中〳〵やぶりたり。是は又和尚の出来口にて
侍らん。いでゑ戒を一々とひたてまつるべし。こたへてきか
しめ給へいつもの御頓作の御かるはうけたまはらんとも
申ければ。さらば一々とひ給へ答て見申べし新右衛門同