東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 3

唐詩選画本, [六編]5巻 - 翻刻

唐詩選画本, [六編]5巻 - ページ 49

ページ: 49

翻刻

【挿絵】   送(おくる)_レ遠(とをきに)     杜甫(とほ) 帯甲(たいかふ)滿(みち)_二 天地(てんちに)_一。胡為君遠行(なんすれぞきみえんかうす)。親朋(しんほう)尽(つく)_二 一(いつ) 哭(こくに)_一。鞍馬(あんば)去(さり)_二孤城(こしやうを)_一。草木歳月晩(さうもくせいげつくる)。関河霜(かんかさう) 雪清(せつきよし)。 別離已昨日(べつりすでにさくじつ)。因見古人情(よつてみるこじんのじやう)。【印「天真」】  -------------------------------------------------------------------------------- 遠方(えんはう)に行人(ゆくひと)に別(わか)るゝ時(とき)送別(そうべつ)の詩(し)を作(つくら)ぬゆへ程過(ほとすぎ)て跡(あと)から送(おく)るとみへたり左(さ)な ければ七/句(く)の昨日(さくじつ)と云(いふ)が聞(きこ)へぬ帯甲の【「帯甲の」ルビ「よろひをきた」】戦士(せんし)が天地(てんち)に満(みち)はびこる時節(じせつ)胡為(なぜ)君(きみ)は遠(えん) 行(かう)するぞ世(よ)が乱(みだ)れて親類(しんるい)も朋友(ほうゆう)も一/同(どう)に哭(なげき)を尽(つく)しておるに鞍置馬(くらおきうま)に乗(のつ)て孤城(ひとつのしろ) を思(おも)ひ切(きつ)て去(さる)ぞ時節(おりふし)草木もかれ歳月(としつき)も晩(くれ)しゆへ関(せき)も河辺(かわべ)も霜(しも)や雪(ゆき)で清(さむ)く て難義(なんぎ)な事(こと)ならん別離(べつり)したはもはや昨日(きのふ)となりしかど其元(そこもと)を忘(わすれ)ず此詩(このし)を 贈(おく)るに因(より)て見られよ故人(こじん)の情(じやう)のあつき事(こと)を

現代語訳

【挿絵】 遠きに送る     杜甫 帯甲天地に満つ。胡為ぞ君遠行する。親朋一哭に尽く。鞍馬孤城を去る。草木歳月晩し。関河霜雪清し。別離已に昨日。因って見る古人の情。【印「天真」】 -------------------------------------------------------------------------------- 遠方に行く人に別れる時に送別の詩を作らなかったので、時が過ぎてから後で送ったと見える。そうでなければ第七句の「昨日」という語が理解できない。鎧を着た戦士が天地に満ち溢れている時節に、なぜ君は遠方へ旅立つのか。世が乱れて親類も朋友も一同に嘆きを尽くしているのに、鞍を置いた馬に乗って一つの城を思い切って去っていく。時節柄、草木も枯れ歳月も暮れているので、関所も河辺も霜や雪で寒くて困難なことであろう。別れをしたのはもはや昨日となったが、あなたを忘れずにこの詩を贈る。これによって見てほしい、古人の情の厚いことを。