翻刻
【挿絵】
送(おくる)_レ遠(とをきに) 杜甫(とほ)
帯甲(たいかふ)滿(みち)_二 天地(てんちに)_一。胡為君遠行(なんすれぞきみえんかうす)。親朋(しんほう)尽(つく)_二 一(いつ)
哭(こくに)_一。鞍馬(あんば)去(さり)_二孤城(こしやうを)_一。草木歳月晩(さうもくせいげつくる)。関河霜(かんかさう)
雪清(せつきよし)。 別離已昨日(べつりすでにさくじつ)。因見古人情(よつてみるこじんのじやう)。【印「天真」】
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遠方(えんはう)に行人(ゆくひと)に別(わか)るゝ時(とき)送別(そうべつ)の詩(し)を作(つくら)ぬゆへ程過(ほとすぎ)て跡(あと)から送(おく)るとみへたり左(さ)な
ければ七/句(く)の昨日(さくじつ)と云(いふ)が聞(きこ)へぬ帯甲の【「帯甲の」ルビ「よろひをきた」】戦士(せんし)が天地(てんち)に満(みち)はびこる時節(じせつ)胡為(なぜ)君(きみ)は遠(えん)
行(かう)するぞ世(よ)が乱(みだ)れて親類(しんるい)も朋友(ほうゆう)も一/同(どう)に哭(なげき)を尽(つく)しておるに鞍置馬(くらおきうま)に乗(のつ)て孤城(ひとつのしろ)
を思(おも)ひ切(きつ)て去(さる)ぞ時節(おりふし)草木もかれ歳月(としつき)も晩(くれ)しゆへ関(せき)も河辺(かわべ)も霜(しも)や雪(ゆき)で清(さむ)く
て難義(なんぎ)な事(こと)ならん別離(べつり)したはもはや昨日(きのふ)となりしかど其元(そこもと)を忘(わすれ)ず此詩(このし)を
贈(おく)るに因(より)て見られよ故人(こじん)の情(じやう)のあつき事(こと)を
現代語訳
【挿絵】
遠きに送る 杜甫
帯甲天地に満つ。胡為ぞ君遠行する。親朋一哭に尽く。鞍馬孤城を去る。草木歳月晩し。関河霜雪清し。別離已に昨日。因って見る古人の情。【印「天真」】
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遠方に行く人に別れる時に送別の詩を作らなかったので、時が過ぎてから後で送ったと見える。そうでなければ第七句の「昨日」という語が理解できない。鎧を着た戦士が天地に満ち溢れている時節に、なぜ君は遠方へ旅立つのか。世が乱れて親類も朋友も一同に嘆きを尽くしているのに、鞍を置いた馬に乗って一つの城を思い切って去っていく。時節柄、草木も枯れ歳月も暮れているので、関所も河辺も霜や雪で寒くて困難なことであろう。別れをしたのはもはや昨日となったが、あなたを忘れずにこの詩を贈る。これによって見てほしい、古人の情の厚いことを。