翻刻
木四時常に緑なり城郭広大にして形勢円也其周
周廻入尓瑪尼亜の里法にて凡三四里あり造作美麗にし
て人居盛なり外ハ環らすに大湟を以てし城ハ皆赤石
を以て檣となす其主毎朝日を拝して礼をなす所の番
獅家水牛虎豹の類甚多し或ハ時有て是を闘ハしめ
て娯となす又別に一大都あり労甫(ラエル)といふ此地もまた
美麗冨饒なり是此国主の別都にして夏月の間ハ国主暑
を避んか為に此所に移り居るなり凡そ此国は其殷
富華美なる事天下第一凡そす国主の宝庫に所蓄の
奇珍異宝あけて計ふへからす国主日用の諸器
の如きハ悉く黄金美玉宝石明珠「デヤモント」の類にて
造らさるの器物なしと云
カレキュット国の説
「マルバアル」ハ其地甚大なり是蓋し古の南天竺の地なり
数多自立の王矦有則「カレキュット」古正(コシン)《割書:又作|柯枝》「カナノヲル」「カランガノル」
「アンがメラ」「マニガール」「タノル」「タラハンコル」等の諸国なり其地すへて
豊饒にして諸穀諸菓胡桝生姜肉桂香薬玉石等を生
す其人皆黯赤黒なりその主を称して「サモリン」と云是尊大
なる土地の神といへる義なり其都城も又「カレキュット」と云
其王所貯の宝物きはめて夥し兵威も又すこふる盛なり
戦闘にハ馬に代ゆるに象を以てす国主の伝統の例甚
異なり必すその姉妹の子を立て位をつかしめて