翻刻
かへて交易す近時 亜毘心域(アビシイ)国に於て漸く銭を用ゆる事を
しり欧羅巴の制に倣ひて金銀銭を造り其面王如号符
号等を印して国中に通行せり
亜毘心域の国主并僧尼の説
亜毘心域ハ「アフリカ」州中に於て最大国にして国
勢も又甚盛なり則黒人国の本地なりと云其国数十州を
わかち皆守令をおく然れとも絶て城郭なし其国主
を「ゴロヲテン。」子キッツ」といひ又「子キユスト」といひ又「アセギユ」と云則
帝王の義なり此有敢て屋居をす夥しき群臣兵卒と
共二遮阳を造り帳を設けて是に居る故に都邑を定
めす行軍止る処是に駐りて政治をなす親衛の軍
卒百餘栄へ象五百餘隻駝馬類ハ無数なり又国
中に一の教化主有これを「アブュス」といふ是万霊の首とい
える義なり其外国中僧尼甚多し僧尼皆配合し
子孫相続くその業をつとめ且農作を事とす且
其教中においてハ幼稚の時に男は陰茎の包皮を
割き女ハ陰門吉舌の皮をさく事各法ありこれを名
つけて「ベス子イデン」といふ且其教に入れハ水火の二戒行なり
火を奉する者ハ初めに其面に烙印をするをいふ水を奉
するものハ毎歳一度水を浴する事凡五十日其間は持斎
して毎日たゝ水を飲ミ又蒸餅と青草食ふなり常
人といへとも此教に入れハ必其法を用ゆといへり