翻刻
卵中に文字を書する法
是ハ戦争中の時節にありて遠方へ秘事告んとするに
其間道路を敵の阻絶して信を通しかたきの節に
用ゆるものなり其法没食子明礬を酢にてとき卵の
殻の上に字を出しよく乾かし其後三四日か間是を
つよき酢の中に投し而後是を乾かして遠きに送
る途中にて人是を見るともあへてしる事なし彼方に
送けるに及てその卵の殻を去れハ白上に文字ありて事
辨すへし又ハ明礬没食子を酢にてとき殻上より出し
よく是を乾かして後その卵を塩水にて煮る事
判時はかりにして殻上の文字消散して中の白身に
字存する也
天下文字の説
天下文字書法凡四ッ漢土の字は前よりして後にすゝむ
蒙古満州等の字は后よりして前にすゝむ是ハ堅行
なり他の諸国ハ皆横行也其内に右行と左行あり書法
四体にして亦奇也漢土に於てすら尚古文科斗の類
識りかたきもの多し又唐の則天の十二字の如き琴譜
笛譜の字の如き道家の符字の如き客商所数字の
如き又数種あり朝鮮に諺文り琉玖に古天人所伝
の文字といへるものあり安南に一種の国字あり《割書:李仙根の|安南雑記》《割書:に曰安南所造の国字数十あり多くハ土旁を加ふと|云或ハいはく安南の国字是黎字と名つく》遼の大祖の