翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

娜二代鉢木 5巻 - 翻刻

娜二代鉢木 5巻 - ページ 25

ページ: 25

翻刻

【右頁 上】 しんくらんど羽衣ひめのばたへ 来りかとりをあざむかんと 両人小そでを柳のゑたにかけ 大小はき物など池のはたにさし おきいかほのぬまへ身をなげし ていに もて なす かとりもうつ くしけれどそなた に は かへ ぬ なんとこれでは 二人いけへ身をなげ たとみへよふがや 【右頁 下】 なる ほど これはよい思ひつきでござんす 【左頁 上坊主横】 あゝ ゑい〳〵ゑ 【左頁 右中段】 かとりひめ あとより おつかけ 来りたび 人に物とふ のふ申三十ばかり の男と廿二三の女 はでななりして此 へんへはまいらぬか おしへてたべ その男はさむらいで 三升といふ身で ござらう女は又 三いふがわりざかり といふべたつた今かるまで見ました

現代語訳

【右頁 上】 新蔵人と羽衣姫は野幅へやって来て、香取姫を騙そうと、二人は小袖を柳の枝にかけ、大小や履物などを池の畔に置いて、伊香保の沼へ身を投げたように見せかける。 「香取も美しいけれど、そなたには敵わない。なんと、これでは二人が池へ身を投げたと見えるだろうが。」 【右頁 下】 「なるほど、これは良い思いつきでございます。」 【左頁 上坊主横】 「ああ、えいえいえ。」 【左頁 右中段】 香取姫が後から追いかけて来て、旅人に尋ねる。 「申します。三十ばかりの男と二十二、三の女で、派手な格好をして、この辺りへは参りませんか。教えてください。その男は侍で、身分のある方でございましょう。女は又、美しい盛りと言うべき者でした。たった今頃まで見ました。」