翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

歌の化物一寺再興 : 2巻 - 翻刻

歌の化物一寺再興 : 2巻 - ページ 5

ページ: 5

翻刻

夫ゟ常うんは ばけ物のふる寺へ ゆきだん〳〵と 夜もふけければ みにしむかせも ものすこくみのけ よだつばかり      なり つなまくさき かせふきくれば 一つまなこの 大ふりそでたんざくを もつてのろりと いつれは【出れば】さもあわれなる こへたか〳〵に 〽こよいの 月はそらに こそすめと うたの下ばかり よみてわつと いふてきへ うせける 【左ページ上、振り袖一つ眼の台詞】 ぼうさん 此上の くわへ【句わへ】 【桶の台詞】 〽おけ〳〵【よせよせ】 そんなくは おけにしろ 地口の ほうか よつほど いゝ 【右ページ下、百姓たちの台詞】 なんのこつたおらがみゝへは ねからわからぬ とうやらちりけ もと【身柱元】が そく〳〵とし てきた 【身柱元は首元のこと。身柱というツボがあるあたり。】 【常うん僧侶の台詞】 どれ〳〵 おれか 上のくを つけよ 【左ページへ】 〽名月や下てはたんこ【下では団子】 くろうなり【食ろうなり】 なんといゝく たんへいこれで よいか もし 〳〵 お せう さん【和尚さん】 わた くしは おまへ の■■【小性=小姓?】 じや おめをかけて くたさり    ませ

現代語訳

それから常雲は 化け物の古寺へ 行き、だんだんと 夜も更けてくると 身にしみる風も 物凄く身の毛が よだつばかり であった 生臭い 風が吹いてくると 一つ目の 大振袖が短冊を 持ってのろりと 出てきて、いかにも哀れな 声高らかに ♪今宜の 月は空に こそ澄めど 歌の下句ばかり 詠んでわっと 言って消え 失せてしまった 【左ページ上、振り袖一つ目の台詞】 坊さん この上の句を 加えて 【桶の台詞】 ♪やめやめ そんな句は 桶にしろ 地口の 方が よっぽど いい 【右ページ下、百姓たちの台詞】 何のことだ、俺の耳には 全くわからない どうやら首筋の 元が ぞくぞくと してきた 【常雲僧侶の台詞】 それでは 俺が 上の句を つけよう ♪名月や下では団子を 食おうなり なんといい句だ 簡単でこれで よいか もし もし お 小姓 さん 私は あなたの 小姓 です お目をかけて ください ませ

英語訳

Then Jōun went to the monster-haunted old temple, and as the night gradually deepened, the chilling wind was so eerie that it made one's hair stand on end. When a foul-smelling wind blew, a one-eyed figure in a large furisode kimono appeared slowly, holding a tanzaku poem strip, and in a truly pitiful voice sang loudly: ♪Tonight's moon shines clear in the sky, but... [The spirit] only recited the lower verse of the poem, then cried "wah!" and vanished completely. [Top left page, dialogue of the one-eyed furisode spirit] Monk, please add the upper verse [Bucket's dialogue] ♪Stop, stop! Such verses should go in a bucket— Puns would be much better! [Bottom right page, peasants' dialogue] What's this about? It doesn't make any sense to my ears. Somehow the back of my neck is starting to tingle with fear. [Jōun the monk's dialogue] Well then, I'll add the upper verse: ♪On this bright moon night, below we shall eat dumplings— What a fine verse! Simple, and is this acceptable? Excuse me, young page, I am your page/servant. Please look favorably upon me.