翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

大昔化物双紙 2巻 - 翻刻

大昔化物双紙 2巻 - ページ 11

ページ: 11

翻刻

いまにうだう ひゝにあつかう さればけものゝ くらゐをくるは よりおいさげ られし事を おやのふる にうだう ひそかにきゝ □【こ】ゆへのやみに ゑちごのく□【に】を いでゝせがれが ありかをたづね さまよひける おりから毛女 郎はいまにう だうがあとを したひくるはを かけおちして ふたりしな んとかくごの ところへふる にうだう ゆきあひ 【左ページへ】 ばけもの だけにこは ゐけんも よくきく 此ところ じやう るりと いふば なれども そんな きの きいた ばけ物 にては なし ずんど むかしの 事ゆへ たじ ひと とをり なり 【右ページ下、古入道の台詞】 いまにうだうやァい 毛女郎やァい ハッアノ ひとこへは かつはち【注一】 にうだう【入道】 ほとゝぎすか ハア そふじや 〳〵 【左ページ下、毛女郎の台詞】 こちの人ばけめに かゝらぬうち はやくしに たいはい のふ 【今入道の台詞】 そなたはながらへ わがばけあとを とふてたべ 【注一、加牟波理入道という便所に出る妖怪がいて「かんはり入道ほととぎす」と言えばこれに出会わないと言われている。その俗信にかけた言葉であろう。】 

現代語訳

【本文】 今入道は狒狒に使われていたが、それで化け物の位を狂言師よりも下げられてしまった事を、親の古入道がひそかに聞き、この世の闇の中で越後の国を出て、息子の居場所を尋ねてさまよっていた。 折から毛女郎は今入道の後を慕って狂言師と駆け落ちし、二人で死のうと覚悟していたところへ古入道が行き合った。 化け物だけに、この恐ろしい見た目もよく効く。 この場面は浄瑠璃というものであるが、そんな気の利いた化け物ではない。ずっと昔の事なので、ただ人通り一通りである。 【古入道の台詞】 「今入道やあい、毛女郎やあい」 「はっ、あの一声は加牟波理入道、ホトトギスか。はあ、そうじゃそうじゃ」 【毛女郎の台詞】 「こちらの人が化け物にかからないうちに、早く死にたいのです」 【今入道の台詞】 「そなたは生き長らえて、私の化け物としての跡を弔ってくれ」

英語訳

【Main text】 Ima-nyūdō had been serving the hihi, but because of this, his rank among monsters was lowered below that of kyōgen performers. His father, Furu-nyūdō, secretly heard of this matter and emerged from the darkness of this world, leaving Echigo Province to wander in search of his son's whereabouts. At that time, Ke-jorō had eloped with a kyōgen performer, following after Ima-nyūdō, and when the two were resolved to die together, they encountered Furu-nyūdō. Being a monster, his frightening appearance was quite effective. This scene is called jōruri, but he is not such a clever monster. Since it happened long ago, he is just an ordinary person in all respects. 【Furu-nyūdō's dialogue】 "Ima-nyūdō! Ke-jorō!" "Ah! That voice - is it Kampahari-nyūdō? A cuckoo? Ah yes, that's right, that's right." 【Ke-jorō's dialogue】 "Before this person becomes possessed by monsters, I want to die quickly." 【Ima-nyūdō's dialogue】 "You should live on and pray for my spirit as a departed monster."