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【右ページ台詞】
よく〳〵
はからへ
〳〵
ずいぶん
ばけなかまで
はなのひしやげぬ
やふにするかいゝ
かつてんか
〳〵
【左ページ上、本文】
たんばの山おくに
ひゝといふもの
ありてよく人を
なやまししゝ【ここでは猪】おゝ
かめ【狼】をとりくらひ
山をあらしけれは
さと人これがために
なやまぬものなし
たんばのくにのばけ
ものだいしやうといふ
しかるにひゝがいつしを
山わらう【山わろう=やまわろ】といへりされ
ども山わらうはばけもの
だいしやうとなるべきはたらき
なければひゝせんかたなく
みこしにうだうといへるものを
こぶんにたのみ申けるは此たび
ゑちごのくに大にうだうがせがれ
一つめ小ぞう世をとつていまにう
たうといゑりかればけしゆぎやうに
いでたるよしきゝなればなんぢかの
いまにうだうとみるならばひつとらへ
はなをひしぎくれよとみこしびうだうに
いゝわたしける
【左ページ、台詞など】
山わらは
へこんでゐる
なにさおめへさん
まだ一つめ
ぐらゐの
小ぞうが
此みこしに
あつておた
まりが
あるもの
か
【おたまりがあるものか=たえられるわけがない=ひとたまりもない】
現代語訳
【右ページ台詞】
よくよく考えろ。ずいぶん化け仲間で鼻をひしゃげないようにするがいい。勝てんか。
【左ページ上、本文】
丹波の山奥にヒヒという者がいて、よく人を悩ませ、猪や狼を捕らえて食らい、山を荒らしたので、里の人はこのために悩まない者はなかった。丹波の国の化け物大将という。しかるにヒヒの子分を山童(やまわろう)といった。されども山童は化け物大将となるべき働きがないので、ヒヒは仕方なく、神輿入道というものを子分に頼んで申したのは「この度、越後の国の大入道の息子、一つ目小僧が世を取って今入道と名乗っているが、化け修行に出たという話を聞いたので、お前がその今入道と見るならば、ひっ捕らえて鼻をひしいでくれよ」と神輿坊主に言い渡した。
【左ページ、台詞など】
山童はへこんでいる。
「何だとお前さん、まだ一つ目ぐらいの小僧が、この神輿に敵っておたまりがあるものか(ひとたまりもない)」