翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

大昔化物双紙 2巻 - 翻刻

大昔化物双紙 2巻 - ページ 5

ページ: 5

翻刻

【右ページ台詞】 よく〳〵 はからへ 〳〵 ずいぶん ばけなかまで はなのひしやげぬ やふにするかいゝ かつてんか 〳〵 【左ページ上、本文】 たんばの山おくに ひゝといふもの ありてよく人を なやまししゝ【ここでは猪】おゝ かめ【狼】をとりくらひ 山をあらしけれは さと人これがために なやまぬものなし たんばのくにのばけ ものだいしやうといふ しかるにひゝがいつしを 山わらう【山わろう=やまわろ】といへりされ ども山わらうはばけもの だいしやうとなるべきはたらき なければひゝせんかたなく みこしにうだうといへるものを こぶんにたのみ申けるは此たび ゑちごのくに大にうだうがせがれ 一つめ小ぞう世をとつていまにう たうといゑりかればけしゆぎやうに いでたるよしきゝなればなんぢかの いまにうだうとみるならばひつとらへ はなをひしぎくれよとみこしびうだうに いゝわたしける 【左ページ、台詞など】 山わらは へこんでゐる なにさおめへさん まだ一つめ ぐらゐの 小ぞうが 此みこしに あつておた まりが あるもの     か 【おたまりがあるものか=たえられるわけがない=ひとたまりもない】

現代語訳

【右ページ台詞】 よくよく考えろ。ずいぶん化け仲間で鼻をひしゃげないようにするがいい。勝てんか。 【左ページ上、本文】 丹波の山奥にヒヒという者がいて、よく人を悩ませ、猪や狼を捕らえて食らい、山を荒らしたので、里の人はこのために悩まない者はなかった。丹波の国の化け物大将という。しかるにヒヒの子分を山童(やまわろう)といった。されども山童は化け物大将となるべき働きがないので、ヒヒは仕方なく、神輿入道というものを子分に頼んで申したのは「この度、越後の国の大入道の息子、一つ目小僧が世を取って今入道と名乗っているが、化け修行に出たという話を聞いたので、お前がその今入道と見るならば、ひっ捕らえて鼻をひしいでくれよ」と神輿坊主に言い渡した。 【左ページ、台詞など】 山童はへこんでいる。 「何だとお前さん、まだ一つ目ぐらいの小僧が、この神輿に敵っておたまりがあるものか(ひとたまりもない)」