翻刻
あり先(ま)ツ電(いなびかり)を見(み)し時(とき)より雷(かみなり)を聞(きく)まで脈(みやく)を押(おさ)へ一(ひと)
二(ふた)と数(かぞ)へ三四(みつよつ)となれば七八(しちはち)百間(ひやくけん)の処(ところ)より来(く)る
ものと知(し)るべし故(かるがゆへ)に光(ひかり)を見(み)て同時(どうじ)に音(おと)を聞(き)く
ものにあらざれば恐(おそ)るゝに及(およ)ばず又(また)越歴(ゑれきとる)は物(もの)
によりて伝(つた)はり難(がた)きと易(やす)きとの差別(しやべつ)あり金類(かねるい)。
炭(すみ)。水(みづ)。雪(ゆき)。生物(いきもの)。火焔(くわえん)。烔(けむり)。湯気(ゆげ)の如(ごと)きものには伝(つた)はり
易(やす)く就中(なかんづく)。銀銅(ぎんあかゝね)に最(もつと)も伝(つた)はり易(やす)し琥珀(こはく)。樹脂(やに)。琉璜(いわう)。
硝子(びいどろ)。玉(たま)。絹(きぬ)。獣毛(けものゝけ)。羽(はね)。乾きたる木(き)。空(そら)の気(き)抔(など)の如(ごと)きも
のには伝(つた)はり難(かた)し故(かるがゆへ)に雷雨(ゆうだち)の時(とき)金箔(きんはく)を置(お)きた
る柱(はしら)又(また)は金屏風(きんびようぶ)の下(しも)総(すべ)て大(おほひ)なる金物(かなもの)の下(しも)に座(すわ)
るべからず乾(かは)きたる木(き)は越歴(ゑれきとる)を伝(つた)へざれども
湿(うるおほ)るときは伝(つた)はり易(やす)くなるゆへに高木(かうぼく)の下(しも)に
雨(あめ)を避(さ)くべからず若(も)しや雷(かみなり)に撃(うた)れ死(し)ぬ人(ひと)あ
らば沢山(たくさん)に水(みづ)を漑(そゝ)ぎ掛(か)け手(て)を胸板(むねいた)の上(うへ)に加(くわ)へ
或(あるひ)は押(お)し或(あるひ)は緩(ゆる)めて息(いき)を《ルビ:吹回|ふきかへ》す手術(てわざ)を施(ほどこ)さば
蘇生(そせい)【左ルビ・いきかへる】することありと云(い)ふ右(みぎ)の如(ごと)く物(もの)により越(ゑれき)
歴(とる)の伝(つた)はり易(やす)きと伝(つた)はり難(がた)きとあるを見(み)て「ふ
らんきりん」は工夫(くふう)を尽(つく)し雷避(かみなりよけ)の柱(はしら)を造(つく)り出(いだ)し