翻刻
位(ゐ)の年(とし)唐土(もろこし)に大地震(おほちしん)ありて北京(ほくきん)斗(ばか)りにも死人(しにん)
の数(かづ)三十万人(さんじうまんにん)ありしと実(げ)に開闢(かいびやく)以来(いらい)の大地震(おほぢしん)
なり又(また)唐土(もろこし)は我(わか)享保(きやうほう)十六年(じうろくねん)彼(かの)雍正(ようせい)九(く)年(ねん)大地震(おほちしん)
にて北京(ほくきん)の死人(しにん)十万(じうまん)を越(こ)したりと云(い)ふ又(また)彼(かの)千(せん)
八百五十五年(はつひやくごじうごねん)我(わが)安政(」あんせい)二年(にねん)には日本国(にほんこく)の江都に
大地震(おほぢしん)ありて都下(とか)大概(おほむね)破損(はそん)せりと此年(このとし)には土(と)
耳其(るこ)国(こく)の「ぎろうさ」と云(い)ふ所(ところ)も全(まつた)く毀(こぼ)ち欧羅巴(ようろつぱ)
の中国(ちうこく)にても諸方(しよほう)破損(はそん)せり斯(か)く地震(ぢしん)は人(ひと)に害(かい)
あるものなれども我(わが)浅間嶽(あさまがたけ)の如(ごと)き煙(けふり)を噴(ふ)く山(やま)
世界中(せかいちう)に三百余(さんひやくあま)りもありて地(ち)の心(しん)より湯気(ゆげ)を
導(みちび)き大空(おほそら)に噴出(ふきいだ)さしむるゆへ億兆(おくてう)の人民(じんみん)安(やす)く
此世(このよ)に居(ゐ)るを得(ゑ)たり火山(くわさん)は実(げ)に莫大(ばくたい)なる功(こう)あ
るものなれども唯(たゞ)稀(まれ)に破烈(はれつ)を起(おこ)し燃石(もへいし)を投出(なけいだ)
し之(これ)がため田畠(でんぱた)を埋(うづ)め人畜(にんちく)を亡(うしな)ふこと少(すく)なか
らずされども不意(ふい)に起(おこ)るものにあらざれば避(さ)
け難(がた)きにあらず以大利(いたりや)国(こく)に「うしゆうす」と云(い)ふ
煙(けむり)を噴(ふ)く山(やま)あり此山(このやま)の麓(ふもと)には人家(じんか)も数多(あまた)あり
て繁昌(はんじやう)の場所(ばしよ)なりしが彼(かの)千八百三十九年(せんはつぴやくさんじうくねん)我(わが)天(てん)