翻刻
の環互(たまきたがひ)に重(かさな)りたる所は殊更(ことさら)玲瓏(すきとほり)たるを以(もつ)て互(たがひ)
に日光(につくはう)を投(な)げ反(か)へし相映(あいうつ)りしゆへ恰(あたか)も七(なな)つの日(にち)
輪(りん)を掛(か)けし如(ごと)くありたるなり猶(な)ほ一(ひと)つの灯籠を
掛(か)け其周辺(そのまはり)に六面(ろくめん)の鏡(かゞみ)を置き互(たがひ)に灯光(たうくはう)を映(うつ)し
たるが如(ごと)し何(なに)も不思議(ふしぎ)なることなし
三月並(みつのつきなら)び照(てら)す事(こと)
中古(なかむかし)比耳西亜(ぺるしや)の名高(なだか)き天文学士(てんもんがくし)「へうりす」と云(い)
ふもの我万治三年(わがまんじさんねん)彼千六百六十年(かのせんろくひやくろくじうねん)三月晦日(さんぐはつみそか)の
夜(よ) 彼邦(かのくに)の暦(こよみ)は日暦(ひこよみ)とて日輪(にちりん)によりて造(つく)れるも
のなれは我邦(わがくに)の月暦(つきこよみ)と違(ちが)ひ十五日(じうごにち)に円月(まるきつき)を
見(み)るの
定(さだめ)なし 月(つき)の周辺(まはり)に一(ひと)つの白(しろ)き暈(かさ)
を生(せう)し漸(やうや)くして三(み)つの暈(かさ)を重(かさ)ね
中(なか)なる暈(かさ)の両側(りやうわき)に二(ふた)つの月(つき)を現(あら)
はしたるを見(み)たりと月暈(つきかさ)の現(あら)
はるゝは日暈(ひかさ)と同(おな)じ道理(たうり)なれ
ば三(み)つの月同時(つきだうじ)に出(い)でたるも七(なゝ)つ
の日輪大空(にちりんおほそら)の氷(こほり)に映(うつろ)ふたると異(こと)なることなし
我邦俗(わがほうぞく)にて何時(いつ)の頃(ころ)よりか七月二十六日(しちぐはつにじうろくにち)の夜(よ)
に三(み)つの月同時(つきだうじ)に昇(のぼ)ると云(い)ひ伝(つた)へ月待(つきまち)するの習(なら)