翻刻
に名高(なたか)き英雄(ゑいゆう)なるが年少(としわか)の時(とき)より諸学(しよがく)に志(こゝろざし)を
潜(ひそ)め殊(こと)に越歴(ゑれきとる)の学問(がくもん)に秀(ひいで)て奥義(おうぎ)を極(きわ)めしより
電(いなびかり)も雷(かみなり)も皆(みな)越歴(ゑれきとる)の所作(しよさ)ならんと思付(おもひつ)き訖度(きつと)工(く)
夫(ふう)を廻(めぐ)らし彼(かの)千七百五十二年(せんしちひやくごじうにねん)我(わが)延享元年六月(えんきやうぐはんねんろくぐわつ)
に至(いた)り雷雨(ゆうだち)の起(おこ)るを待(ま)ち紙鳶(たこ)を空中(くうちう)に放(はな)ちた
るに雲間(くもま)の越歴(えれきとる)。糸(いと)に伝(つた)はり種々(しゆ〴〵)の試験(ためし)に上(のぼ)せ
けるに聊(いさゝか)も尋常(じんしやう)の越歴(ゑれきとる)に異(こと)なることなきを発(はつ)
明(めい)せり欧羅巴(ようろつぱ)の学者(がくしや)も之(これ)を聞伝(きゝつた)へ又(また)同(おな)じく試(た)
験(め)したるに全(まつた)く「ふらんきりん」の説(せつ)に相違(さうい)なき
より世(よ)の説(せつ)一変(いつへん)し電(いなひかり)は越歴(ゑれきとる)の火花(ひばな)にて雷(かみなり)は陽(よう)
の越歴(ゑれきとる)と陰(いん)の越歴(ゑれきとる)と
合(あ)はんとするとき
脈(みやく)一(ひと)ツの間(あいだ)に二十八(にじうはち)
万里(まんり)の遠路(とうみち)を馳(は)
するゆへ空(そら)の気(き)
遽(にわか)に其行跡(そのゆきあと)の空(くう)
所(しよ)を塞(ふさ)がんとする
より響(ひゞき)を発(おこ)すと云ふ