翻刻
目的を|定(さたむ)る事は。|樹竹(じゆちく)|岩石(がんぜき)|堂舎(どうしや)|丘垤(きうてつ)|何(いづれ)にかぎらず。彼所(むかふ)の
正面(しやうめん)に在(ある)にまかせて目じるき物を吉(よし)とす。勿論(もちろん)本座《割書:本座の事|下に委し》
より見込(みこみ)《割書:見込の法|下にあり》のよろしきを専要(せんゑう)とすべし。兼(かね)てまた開地(かいち)
《割書:開地の事|下に委し》にいたりて。見返(みかへし)《割書:見返の法|下にあり》を為(なす)とき障(さは)りなく彼(かの)目的
見返(みかへし)し安(やす)からん事をと遠慮(ゑんりょ)すべし。もし開地にて目的を
見返す事|疑(うたがは)しき時は。かならず其術に差異(ちがい)出来(いでく)るものなり。
或はまた広原(くはうげん)平野(へいや)田畑(てんはた)海浜(かいひん)のごとき嚝遠(くはうゑん)の場所(ばしょ)にて。其|近(きん)
辺(へん)に目(め)じるき物(もの)なくして。目的たしかに定めがたきときは。
空(くう)の目的(めあて)《割書:空の目的といふ事|いさゝかならひあり》を用(もち)ゆべし
本座(ほんざ)を選(えら)ふ作法の事
本座(ほんざ)とは其(その)所(ところ)より目的を耽視(みこみ)て。遠近(ゑんきん)広狭(くはうけう)浅深(せんしん)等をはかり
知(し)らんと欲(ほつ)する場所(ばしょ)を云。《割書:本座の図|下に画す》扨(さて)此本座を選(ゑら)ぶ事は。
たゞ目的の見(み)えやすき所(ところ)を用(もちゆ)る事。専一(せんいち)とすべしといへども。
また其(その)所(ところ)より開除(ひらき)の善悪(ぜんあく)を察(さつ)する事も大切(たいせつ)なり。其|謂(いゝ)は
開地(かいち)の方(かた)に除畾(じょらい)甚(はな)はだ少(すくな)きか。又は池沼(ちせう)凸凹(てつおう)の妨(さまたげ)あるときは。
心の侭(まゝ)に開地(かいち)を求(もとむ)る事|成(なり)がたし。たとひ求(もとめ)得(え)る事ありとも。
其法|順路(じゅんろ)ならざるときは。事業(じぎやう)の害(がい)と成(なる)べし。故(かくるゆへ)に此(この)境(さかい)を
能々(よく〳〵)体認(ていにん)してのち。選(えら)ぶべしと云(いふ)
開地(かいち)を求(もと)る作法(さほふ)の事
開地(かいち)とは本座(ほんざ)の左右(さゆう)にても前後(ぜんご)にても。其|地(ち)のよろしきに
したがひて。間数(けんすう)をさだめ開除(かいじょ)して。其|所(ところ)よりもまた目的を
耽視(みこむ)べき場所(ばしょ)をいふ。《割書:開地の図|下に画す》これ遠近(ゑんきん)広狭(くはうけう)高低(かうてい)浅深(せんしん)等を
量(はかり)知(し)るへき本元(ほんけん)の種子(たね)なり。扨(さて)此開地を求(もとむ)る事は。彼(かの)先量(せんりやう)に
はかりたる町間(てうけん)の三十分一の間数(けんすう)を用(もちゆ)る事。古(いにしへ)よりの法(ほふ)たり。