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【右頁上段】
なへのつるながし
といへども
これをたゝば
はづれなん
かまのはだ
わるしと
いへどもこれを
こすらば
あなあき
なんもつ
てうまれ
たきりやう【器量】
ふきりやうは【不器量】
せひもなし
こゝに一つのなべ
ありあたらしき
よりかなけ
出ていかやうに
してもなをらず
ついにたなのすみに
すたりものとなりて
いけるがしやうとく【生得】この
なべこゝろすぐ【直】ならぬ
ものにてたな中をあばれ
あるきけんくわをこのみて
ついにわれなへとなりそのくせ
よくしん【欲心】ものにてとかくうぬが
なべに入る事ばかり心がけ
【左頁上段】
くらしけるがやよひのころ
ぶら〳〵としな川のしほひ【潮干】へ
出かけはまへをうろ〳〵して
たのしみいたりしに
はるかのおきにひかり
あるをみつけふしきに
思ひよく〳〵みれば
もろこしふねとみへて
中にこがねのかま一つ
のりてゐたりけるが
しだひにくが【陸】の
かたへながれよれば
なべはやがて引止
なんでもよき
しろものなりと
心によろこび
やうすをたづねる
〽もろこしの郭巨(くわくきよ)がほりし
こがねのかまは舟ゆさん【舟遊山】に
出けるがなんぷうにあひて
たゞひとり日本品川の
おきへたゞよいきたりわれ
なべにあひてさいなんにあひ
しやうすをかたりなになにとぞ
せわしてもろこしへ
かへしてくれよとたのむ
【右頁下段】
〽こいつはきんねんのほり出して
なんでもよしはらへうつて
やつたらほんのいりまめに
花た
【煎り豆に花】=とうてい期待できそうにないことが
現実に起こるたとえ
〽おことばは
わかり
ませぬが
大かた
こくせん
や【国姓爺】の
じやう
るりに
ある
せんだん
によ【栴檀女】のやうな
御みのうへで
ござり
ませう
しよじ
われら
のみこみ
〳〵
【左頁下段】
こかねのかま曰
〽ちゝんぷい〳〵とら
にやん〳〵うんきん
だらりんかんきん
ちりりんたんこの
てんぷら
くひたひ
パア〳〵
評に曰
〽かまといへは
おとこで
ありしふな
ものだが
どふして
女だの
さくしや
〽ゴウ
〳〵
〳〵〳〵
現代語訳
【右頁上段】
鍋の鶴が長いといっても、これを叩けば外れてしまうだろう。釜の肌が悪いといっても、これをこすれば穴が開いてしまうだろう。物は生まれついての器量があり、不器量は仕方がない。ここに一つの鍋があり、新しいものより金気が出て、どのようにしても直らず、ついに棚の隅に廃れ物となってしまった。生来この鍋は心が素直でないもので、棚の中を暴れ回り、喧嘩を好んで、ついに割れ鍋となった。そのくせ欲深いもので、とにかく自分の鍋に入ることばかり心がけて
【左頁上段】
暮らしていたが、弥生の頃、ぶらぶらと品川の潮干狩りに出かけて浜辺をうろうろして楽しんでいたところ、はるか沖に光るものを見つけて不思議に思い、よくよく見れば唐船と見えて、中に黄金の釜が一つ乗っていた。しだいに陸の方へ流れ寄れば、鍋はすぐに引き止めて「何でもよい品物だ」と心に喜び、様子を尋ねる。
♪「唐土の郭巨が掘った黄金の釜は船遊山に出かけたが、南風に遭って、ただ一人日本の品川沖へ漂い来たり、我が鍋に会って災難に遭った様子を語り、何とぞ世話をして唐土へ帰してくれよ」と頼む。
【右頁下段】
♪「こいつは近年の掘り出し物で、何でも吉原へ売ったら本当に煎り豆に花が咲く」
♪「お言葉は分かりませんが、大方『国姓爺』の浄瑠璃にある栴檀女のような御身の上でございましょう。所詮我らには理解しがたい」
【左頁下段】
黄金の釜が言った:
♪「ちちんぷいぷい、とらにゃんにゃん、うんきんだらりん、かんきんちりりん、たんこの天ぷら食いたい、パーパー」
評して言う:
♪「釜といえば男であったはずなのに、どうして女なのか」
作者
♪「ゴウゴウゴウゴウ」
英語訳
【Right page, upper section】
Even if the pot's handle is long, if you strike it, it will come off. Even if the kettle's surface is rough, if you scrub it, holes will appear. Things have their inborn qualities, and ugliness cannot be helped. Here was one pot that, despite being newer than others, gave off a metallic taste that could not be fixed no matter what, and finally became discarded goods in a corner of the shelf. By nature this pot had a crooked heart, rampaging about the shelf, preferring quarrels, and finally became a cracked pot. Yet it was greedy by nature, always thinking only of things entering its own pot.
【Left page, upper section】
While living this way, around the third month, it went wandering to the clam digging at Shinagawa shore, strolling around the beach for pleasure. When it spotted something shining far offshore and wondered what it could be, looking carefully it appeared to be a Chinese ship with a golden kettle aboard. As it gradually drifted toward shore, the pot immediately stopped it, thinking "this must be some fine goods" and joyfully inquired about the situation.
♪"The golden kettle that Guo Ju of China dug up went on a pleasure boat trip but encountered a south wind and drifted alone to the waters off Shinagawa, Japan. Meeting your pot in this disaster, I tell my story and beg you to help me return to China."
【Right page, lower section】
♪"This fellow is a recent find - if sold to Yoshiwara, it would truly make flowers bloom on roasted beans!"
♪"I don't understand your words, but most likely your circumstances are like those of Sendan-nyo from the 'Kokusenya' joruri. After all, it's beyond our understanding."
【Left page, lower section】
The golden kettle said:
♪"Chichin pui pui, tora nyan nyan, unkin dararin, kankin chiririn, want to eat tanko tempura, paa paa"
Commentary says:
♪"Though kettles should be male, how is this one female?"
Author:
♪"Go go go go"