翻刻!草双紙の世界

コレクション: NDL鳥居清長

思事夢濃枕 3巻 - 翻刻

思事夢濃枕 3巻 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

【右上】 次のおきやくはめつらしい十四 はかり【歳が十四ぐらいの】のやぶり【「やぶいり(藪入り)」の変化した語。春と秋の二回あった。】つねはお こされるものか七ツまへから めをさまし ほふひき【「ほうびき(宝引)」…福引の一種。数本の縄をたばね、その中の一本に橙(だいだい)の実(胴ふぐり)をつけてそれを引き当てた者に賞をだすもの。銭をつけて引かせることもあった。中世から近世にかけて、正月の遊戯として行なわれ家庭で行なうほかに、辻宝引、飴宝引などの賭博的なものもあった。】にかつた 弐百【価格から「ひととき寝」】でねてみれは おさだまりに ゑんまさまへまいり あさくさのくわん おんさま かめゐど五百ら かんそれから うざえもんへはいる あきたい【飽き、退屈】 【左丁】 くつをするほどみて そとへてた所かまた はやいからめくろへ参り かへりにこひき丁【木挽町=東京都中央区銀座の歌舞伎座付近の旧地名。江戸時代、森田座、山村座など多くの芝居小屋があったため、それをさしていうことが多い。】 をひとまく【一幕】みて又 さかい丁【「堺町」…東京都中央区日本橋人形町のあたりにあった地名。江戸時代の芝居街で葺屋町の市村座に対して中村座があった。】かんさ【「かんざ(勘三)」…歌舞伎やその劇場をいう言葉。(歌舞伎俳優中村勘三郎の略称で、初代が江戸歌舞伎の創始者であるところから転じた語)】へはいり これもしたゝかみて にんきやうしばいみ【え(へ)?】なん たとひせんみ?て【肥前(節)見て?】これから 両国【江戸時代に火除地となり、芝居茶屋、飲食店の並ぶ盛り場であった。川開きに催された花火でも有名。】へいかふかまつ内【料理屋の屋号か】へいつて なんそうまいものをくおう 内てもねたりおきたりして あそひぬすつとに□□て【ミせて=見せて?】 も七日斗り□【が?】ものは ありよく〳〵の ことてまへのほう からめをさま せは まだおまへはや      い に よ 【盗っ人に見せても/七日斗がものは/あり、よくよくの/事。手前のほう/から目をさませば まだお前、早/い に よ】 【別の資料 https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053333/viewer/12】

現代語訳

【右上】 次の客は珍しい十四歳ばかりのやぶ入りで、普段は起こされるものなのに、七つ(午前四時頃)前から目を覚まし、宝引きに勝った二百文で寝てみれば、お決まりコースで閻魔様へお参りし、浅草の観音様、亀戸五百羅漢、それから右衛門(芝居小屋)へ入るが飽きて退屈になった。 【左丁】 靴を擦るほど見て外へ出た所がまだ早いから目黒へ参り、帰りに木挽町で一幕見て、また堺町の勘三(歌舞伎座)へ入り、これもしっかり見て、人情芝居を見て何だ、たとえ肥前節を見て、これから両国へ行こう。かまつ内(料理屋)へ行って何そう美味いものを食おう。店内でも寝たり起きたりして遊び、盗人に見せても七日ばかりがものはあり、よくよくのこと。手前のほうから目を覚ませば「まだお前、早いによ」

英語訳

【Upper right】 The next customer was an unusual fourteen-year-old on yabuiri (servant's holiday), who, though normally having to be woken up, awoke before seven o'clock (around 4 AM) and used the 200 mon he won at hōbiki (a type of lottery game) to sleep at the pleasure quarters. Following his usual routine, he paid respects at Enma-sama (King of Hell), then Asakusa Kannon, Kameido's Five Hundred Arhats, and then entered the Uemon theater, but grew bored and restless. 【Left page】 After watching until his shoes were worn from shuffling, he went outside, but since it was still early, he went to Meguro. On his way back, he watched one act at Kobiki-chō, then entered the Kanza (Kabuki theater) at Sakai-chō, watched this thoroughly too, saw a human drama, and after watching perhaps a Hizen musical performance, decided "Let's go to Ryōgoku now. Let's go to Kamatsu-uchi (restaurant) and eat something delicious." Even inside the shop, he dozed and woke repeatedly while enjoying himself. "Even if shown to a thief, there are things for about seven days - what a situation. If you wake up on your own, 'You're still too early!'"