翻刻
【右丁・上段】
是/天照太神(てんしやうたいしん)の御事也
すなはち女体(によたい)にてまし
ませども。地神のはじめと
たふとみ奉る。しかれば女は
人のはじまり也。さはいへど
世すへに成。心すなほならず
そのゆへに。つれ〲草にも
女の性(しやう)はみなひがめり共
人のはしまり
【右丁・下段】
さだまらざりける時に。西の京に女有けり。其をんな世
人にはまされりけり。其ひとかたちよりは心なんまさり
たりける。ひとり(ぬしある人也)のみもあらざりけらし。それを《振り仮名:かの|なり平也》まめ
おとこ。《振り仮名:うち物かた|物かたりうちして也》らひて。帰りきていかゝ思ひけん。ときは
やよひの朔日。あめそぼふるにやりける
古今 おきもせずねもせで夜るをあかしては
はるのものとてながめくらしつ
三
昔男有けり。《振り仮名:けざうし|思ひをかくる也》ける女のもとへ《振り仮名:ひじきも|海■也鹿尾藻トカク》といふ物をやるとて
おもひあらばむぐらの宿にねもしなん
ひしきものには袖をしつゝも
二条の后のまだ帝(清和帝也)にもつかふまつり給はで。只人(タヽフト)にておはしける時の事也
四
むかし。ひんがしの五条に《振り仮名:おほきさいの|染殿の后也清和母■也》宮おはしましける
西のたいに住人(一条の后也)有けり。それを《振り仮名:ほゐにはあ|思ひのまゝにはあらて也》らで。こゝろざし
【左丁・上段】
又はすなほならずしてつた
なきものは女なりともいへり
されど心はなどか。かしこきよ
りかしこきにうつさはうつら
ざらんとあれは。つねにたし
なみ給ふべし。まづおさなき
時より。手ならひ第一にし
ぬひはり。紡績(うみつむき)。これらは
女の手わざ