翻刻
【右丁・上段】
しうげんにしんの祝言。又
仲より下はさうの祝言
しかれども大かた作法は
たがへぬ也。先一ばんの乗
物/局(つほね)上/臈(らう)なり。其次に
輿(こし)■りも乗物にても
嫁(よめ)の乗(のり)給ふなり。縁(えん)又は
廊下(らうか)迄(まで)かきすへ置べし
殿(との)出給ひてこしに手
をかけ給ふ。それより殿は
入給ふ。待(まち)上ろう立出て
あんなひして。けしやうの
まへ入。さて座敷(ざしき)へ出る也
本/式(しき)は嫁(よめ)の座(ざ)は下にゐ
婿(むこ)は上座なれ共。是はしん
の祝言也
【右丁・下段】
あづさ弓ひけどひかねど昔より心は君によりにしものを
といひけれど。おとこかへりにけり。女いとかなしくてしりにた
ちてをひゆけどえをひつかで清水のある所にふしにけり
。そこなりける岩に。《振り仮名:およひ|小ゆび也》のちしてかきつける
あひ思はでかれぬる人をとゞめかね我身は今ぞきへはてぬめ■
とかきてそこに《振り仮名:いたづら|むなしくなる也》に成にけり
廿五
昔男有けり。あはじともいはざりける女の。さすが成けるがも
とにいひやりける
古今
秋の野にさゝわけし朝の袖よりもあはでぬる夜ぞ《振り仮名:ひぢまさ|ぬれまさる也》りける
いろこのみなるをんなかへし
古今小町
みるめなき我身を《振り仮名:うらと|うら■也》しらればやかれなであまのあしたゆゝくる【たいてい「たゆく来る」と翻刻されているところだが、踊り字の位置がずれている。なお拾穂抄も同じくずれた表記である】
廿六
昔男五条わたり成ける女を。えゝず成にをることゝ。わびたりける人の返事に
おもほえず袖に■なとのさはぐかなもろこし舟のよりしばかりに
廿七
昔男。女のもとに一夜いきて。またもいかず成にけれは。女の手あらふ
【左丁・上段】
けしやう道具
【左丁・下段】《振り仮名:|》
所に《振り仮名:ぬきすをうちや|たらひの上にをくすたれ也》りて。たらひのかけに《振り仮名:見えける|女のかけみゆる也》をみづから
我斗物思ふ人はまたもあらじと思へは水の下にも有けり
とよむを。こざりける男たち聞て
みな口に我やみゆらんかはづさへ水の下にてもろ声になく
廿八
むかし色このみなりける女いでゝいにければ
などてかくあふごかたみに成にけん水もらさじとむすびし物を
廿九
昔。《振り仮名:春宮|陽成院也》の《振り仮名:女御|二条の后也》の御方の花の賀に召あづけられたりけるに
新古今
花にあかぬなげきはいつもせしかどもけふのこよひににる時はなし
三十
むかし。おとこ。《振り仮名:はつかなり|わつかにあひかたらふ女也》ける女のもとに
あふことは玉のをばかりをもほへでつらき心のながく見ゆらん
卅一
昔《振り仮名:宮の|きん中也》内にてあるごたちの局の前を《振り仮名:わたりける|なり平過ゆかれし也》に。何のあたにかおもひ
けん。よしやくさばよ。ならんさが見んといふ。おとこ
つみもなき人を《振り仮名:うけ|のろふ事也》へは忘草おのがうへにぞおふといふなる