翻刻
【右丁・上段】
挿絵
【右丁・下段】
玉のをゝあはをによりて結べれはたえての後もあはんぞ思ふ
卅六
むかし。わすれぬるな ̄ンめりと。《振り仮名:とひごと|うたがひてとふ也》しける女のもとに
谷せばみ峯まではへる玉かづらたへんと人に我おもはなくに
卅七
むかし。おとこいろごのみなりける女にあへりけり
うしろめたくやおもひけむ
我ならで下ひもとくな朝顔の夕かげまたぬ花には有とも
かへし
ふたりして結びし紐をひとりして逢みる迄はとかじとぞ思ふ
卅八
むかしきのありつね《振り仮名:がり|いもふと也》いきたるにありきて
をそくきにけるによむでやりける
君により思ひならひぬ世の中の人は是をや恋といふらん
返し
ならはねは世の人ことに何をかも恋とはいふととひし我しも
【左丁・上段】
挿絵
【左丁・下段】《振り仮名:|》
卅九
むかし《振り仮名:西院のみ|サイ井淳和帝也》かどゝ申すみかどおはしましけり。其みかどのみ
こたかいこと申す《振り仮名:いまぞ|おはします也》かりける。其みこ《振り仮名:うせ玉ひて。|承和十五年五月十五日に》おん
はふりの夜。其宮のとなり成ける《振り仮名:男。|なり平也》御はふり見んとて
女車にあひのりて。《振り仮名:出ざりけり。|あはれをかけてかへらんとせし也》いと《振り仮名:久しうゐていで|みこの棺を久しくをきて出し奉らぬ也》奉らず
うちなきてやみぬべかりける間に。《振り仮名:あめの下色|あめのしたにかくれなき也》ごのみ。源の
いたるといふ人是も《振り仮名:物見る|ほうふりをみる也》に。《振り仮名:此車を|なりひらの也》女車とみて。よりきて。とかく
《振り仮名:なまめく|けさうする也》間に。かのいたる。蛍を取て《振り仮名:女車に入|かほをみんとそ也》たりけるを。車成ける《振り仮名:人|女也》
此蛍のともす火にやみゆらん。ともしけちなんずるとて。のれる《振り仮名:男|なりひら也》のよめる
出ていなば限り成べきともしけち年へぬるかとなくこゑをきけ
かのいたるかへし
いと哀なくぞ聞ゆるともしけちきゆる物とも我はしらずな
《振り仮名:あめのしたの色このみの哥|うれいふかき所にてかやうの事は大きに色このみの人也》にては《振り仮名:なを|ほめたる也》ぞ有ける。いたるは
したがふがおほちなり。《振り仮名:みこの|みこのためには也》ほゐなし