翻刻
【右丁・上段】
挿絵
【右丁・下段】
四十
むかし《振り仮名:わかき|なり平也》男。げ【「け」のはず。拾穂抄も「げ」】しうはあらぬ女を思ひけり。さかしらすゝ【「る」となるべきところ。拾穂抄は「る」】おや有
て。《振り仮名:思ひもぞつく|女の此男に思ひやつかんとて也》とて。此女をほかへをひやらんとす。さこそいへ。まだ
をひやらず。《振り仮名:人の子|なり平をいふ》なれは。まだ心いきほひなかりけれは。とゞむ
るいきほひなし女もいやしけれは。《振り仮名:すまふ力なし。|をひやるをいなともうらみぬ也》さる間に《振り仮名:思ひ|なり平の》
《振り仮名:はい|思ひは也》やまさりにまさる。にはかにおや此女を《振り仮名:おひ|をひ出す也》うつ。男ちの涙をながせ
どもとゞむるよしなし。《振り仮名:ゐて出て|女をおやかひきゐて出す也》いぬ。おとこなく〳〵よめる
出ていなば誰かわかれのかたからんあるじにまさるけふはかなしも
とよむて《振り仮名:たえ|なりひら》入にけり。《振り仮名:おや|女のおや也》あはてにけり。猶思ひてこそいひしが
《振り仮名:いとてしもあらじと|それ程にはあらしと思ひしにとめいわく?かる也》思ふに。【「いとて」は「いとかく」とあるべきところ。拾穂抄は「かく」】しんじちにたえ入にけれは。まどひて願たて
けり。けふの入逢ばかりにたえ入て。又の日のいぬの時ばかりになん
からうじていき出たりける。むかしの《振り仮名:わかう|なり平也》どは《振り仮名:さるすけ|さやうに好色のふかき也》る
物思ひをなんしける。今のをきな。まさにしなんや
四十一
昔。女はらからふたり有けり。ひとりはいやしき男のまづし
き。ひとり
【左丁・上段】
しうげんのさかづきは式三/献(ごん)
の三ぼう娵(よめ)とむことにす
はるべし。さて銚子(てうし)提(ひさげ)を持
出。ざしきにかざりたる瓶子(へいじ)
のめてうの方の酒を入れ
男蝶(をてう)のへいじのさけを
提に入べし。扨へいじの
をてうをうつぶけ。めてうの
かたは。あをのけてをき。さて
口をさし。式三ごんにくはへて
男のむ也。三どづゝくはへて也
二度めはむこのみて始に
さす。三度めは娵のみ始て
むこおさむるいづれも三度
づゝくわへてのむゆへ以上
三々九度なり