翻刻
【右丁・上段】
一ばんに手がけ二ばん三方三に
引わたし也。しやく人出。盃の三方
をむこのかたへむき。立まはりて
其まゝ娘のまへにをく。かひぞへ
の上ろう盃をとり。酒をうけ
娘にわたす。よめとりてくはへて
のむ也。扨むこのかたへ持てゆく
むこ三度のむ。しやく人盃をとり
下二つの盃を取かへ。あたらしき
盃を上へかさねて。娘のかたへ行
右のことく三度くわへ。又むこの
前にをく。又三度のみおさむる也
しやく人。盃も三方も取入る
其時むこ座を立也。扨雑
煮出て後。よめと侍上らう
さかづきこと有べし
【右丁・下段】
はあてなる男もたりけり。いやしき男《振り仮名:も|女也》たる。しはすの晦日にうへ
のきぬをあらひて。手づからはりけり。心さしはいたしけれど。さるいやしき
わざもならはざりければ。うへのきぬのかたをはり《振り仮名:やり|やふりて也》てげり。せんかたも
なくて。たゞなきになきけり。是をかのあてなる《振り仮名:男|なり平也》聞て。いと心
くるしかりけれは。いと《振り仮名:きよら|あたらしき也》成。ろうさうのうへのきぬを見出てやるとて
古今
此草の色こきときはめもはるにのなる草木ぞわかれざりける
むさし野ゝこゝろなるべし
四十二
昔。色好みとしる〳〵。女を《振り仮名:あひい|かたらひたる也》へりけり。《振り仮名:されどにくゝはたあらさり|我計を頼ましきものとしりなからにくからぬ也》
切かてもまた也
けり。《振り仮名:しば|さい〱也》〳〵いきけれど。猶いとうしろめたく。さりとて《振り仮名:いかではた|ゆかてもまた也》え
有まじかりけり。《振り仮名:なをはたえあらざ|われといさめてすてんと思へとすてかたき也》りける中なりけれは
。ふつか三日ばかり。さはる事有てえいかでかくなん
出てこし跡だにいまだかはらじをたがかよひぢと今はなるらん
ものうたがはしさによめる成けり
【左丁・上段】
きやうのせんのづ
二十 左
おき鳥
【挿絵】 【挿絵】
三つさかつき
饗
梅 こい
■■
食
【挿絵】 【挿絵】
手掛 右 おき鯉
【左丁・下段】《振り仮名:|》
四十三
むかしかやのみこと申すみこ。おはしましけり。そのみこ
《振り仮名:女をおぼし|恋にあらすあはれみ給ふ也》めして。いと《振り仮名:かしこ|かたじけなく也》くめぐみつかう玉ひける
を。《振り仮名:人聞つけて|又かよふ人有となり平聞付て也
》文やる。ほとゝぎすの《振り仮名:かたを|ゑにかきて也》かきて
郭公ながなく里のあまたあれは猶うとまれぬ思ふものから
といへり。この《振り仮名:女気しきをとり|われをなりひらのうたかふときけんをとる也》て
名のみ立しでのたをさはけさぞ鳴いほりあまたとうとまれぬれは
時は五月になん有ける男かへし
いほりおほきしでのたをさはなを頼む我住里に声したへすは
四十四
むかしあがたへ行人に。馬のはなむけせんとてよびてうとき
人にしあらざりけれは。家どうしさかずきさゝせて。女のさう
《振り仮名:ぞくかづけん|から衣なるへしやる也》とす。あるじの《振り仮名:男|なりひら》哥よむで《振り仮名:ものこし|裳腰ナリ》にゆひつけさす
出て行君が為にとぬぎつれば我さへもなく成ぬべき哉
此哥は有が中に面白けれは。心とゞめて《振り仮名:よますはらにあちはひて|女によまする也一ふかく腹中にきんみしてよみしとの心也》