翻刻
【右丁・上段】
男火女火大きにわろし子あれ共いしよくは
たらかずしてくぜつ事有但くわう神をまつりよし
歌に ひにならびこひしき事はいやまして
かゝるあそびにあふぞくやしき
男火女土大に吉子三人か九人ふつきにして命
長しくわう神をまつるべし此子内三人置を立べし
歌に あひそめし心をふかくむすびてし
君がなさけのわすれがたさよ
男火女木よし子二人か八人ふつきにしてよ
しうぢ神をまつりて吉牛馬にえん有
歌に たのもしさかく過なんと思へども
ごせをねがふぞわびしかりける
男火女金大にわろし但半吉子二三人有
いしよく共にとぼしき也但人にしらる事有
歌に いつしかと思ひわするゝひまもなく
物おもふ事ぞわびしかりける
男火女水大にわろし子あれ共ひん也衣
食共にとぼしくぜつおほし三人の内一人わろし
歌に もろともにあふが心はなけれども
わか身ひとつにむまる子はなし
【右丁・下段】
○むめがえだにこそ鶯(うぐひす)はすをくへかぜふかばいか
にせん花にやどるうぐひす
○花ちる里のつれ〴〵たえ〳〵のことの
音花たちばなの袖のかに山ほとゝぎすおとづるゝ
○思ひねのゆめのま枕にちぎる明がたさめてそ
もとのつらさにて泪(なみだ)の外はあらじな
○さよふけてなくちどり何を思ひあかしね浮(うき)
世をすまの恨にて我とひしき源かな
○しらまゆみのまゆみのそるべきはそらひで八
十のおきなの恋にこしをそらひた
○みほの松風ふきたへておきつなみもあらじな
水にうつろふ月ともに詠(ながめ)につゞくふじさん
〇心づくし 又おこかまのきよくともいふ
○心づくしの秋風にすまのうらはをなみ枕衣
かたしき独(ひとり)ねて夢もむすはぬよな〳〵
○ふる里をはる〴〵とへたてゝこゝにすみた川都
【左丁・上段】
男土女土半吉はじめよし後(のち)わろし子三人
あれども何事も思ふに力なし万やまひ有
歌に 身をくだきむねをほのほにこがせ共
いけるかいなきわが身なりけり
男土女金大によし子九人有でんばくに付吉
つねにかまの神をまつるべし心のまゝにめてたし
歌に にしひがしふたりが中にくらたてゝ
さけのいづみのわくとおもへば
男土女水大にわろし何事も心ならす子なし
物を打をとすやうに力(ちから)なし氏神(うぢがみ)をまつるべし
歌に つち水はくさ木のたねときゝつるが
いかにわれらはむまれ子もなき
男土女木半吉也はじめはまつし後はよし子五人
さふらひは知行を持あき人は金銀をもつべし
歌に つちと木はそんの有なる中なれど
いのれば神のめぐみありけり
男土女火大によし子五人いしよく共おほし
何事も心のまゝにむびやうにしていのちながし
歌に あらうれしいとゞたのしきわか身もかな
よろづの物にとほしからねば
【左丁・下段】
とりにことゝはん君はありやなしやと
○夏(なつ)の夜のあけぼの夢をさますほとゝざす
白妙(しろたへ)にみゆるは月にさゆるうのはな
○霧(きり)にたゝずむ小車(をくるま)やつしてたてるおぐ
るま人め忍ぶのちぎりこそ受(うけ)て閨(ねや)の通路(かよひぢ)
○あすか川の水上(みなかみ)を硯(すゞり)の水にせきいれて
かくことのはゝ尽(つく)まじかけふを暮さむ命かは
○契(ちき)りしよひのたそかれしるべふかきそらだき
とめ入/方(かた)の荻(はぎ)の戸(と)を開(ひらく)や袖のうつりが
○太平(たいへい) 又たいへいらく共いふ
又ひなつちのきよくとも云
○天下太平長久(てんかたいへいちやうきう)におさまる御代(みよ)の松風(まつか)ひな
づるはちとせふるは台【谷ヵ】のながれにかめあそぶ
○人しれぬちぎりはあさからぬ物おもひつゝむと
すれどむらさきの色に出るそはかなき
○はかなくもくまなき月をいかでうらみしとに
かくにわか袖にたえぬなみだの夕ぐれ