東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

伊勢物語大全 - 翻刻

伊勢物語大全 - ページ 31

ページ: 31

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【右丁・上段】 しうげんの時はいづれも むすび申也くはへも同前 くわへはてうしの口と提の 口とあふやうにすへし 一まの内にて。くわへする也 座敷せばくはしきゐごし にする。たゞしひさげを内へ 入てくわへ申へし長ゑ もちやう左の手をつき。右 の手に長ゑの酒の口を 我右になし横(よこ)に長ゑを もち。つぐへし。ひさげの 持やう。つるの中程を右 にもち。左の手を右の手の 下へかさねて持也。扨てうし 左のかたへかへらは。ひさげは 【右丁・下段】 といひて。此宮にあつまりきゐて有けれは此おとこ   むぐらをひてあれたる宿の《振り仮名:うれたき|うれはしきはと也》は仮にも《振り仮名:鬼の|女のこと也》《振り仮名:すだく|あつまる也》成けり とてなん出したりける。此女どもほひろはんといひければ   打わびておちぼひろふときかませば我も田づらにゆかまし物を 五十九 昔。おとこ京をいかゞ思ひけんひんがし山にすまんと思ひ入て 後撰   住わびぬ今はかぎりと山里に身をかくすべき宿もとめてん かくて物いたくやみてしに入たりけれは。おもてに水そゝ きな ̄ンどしていきいでゝ   我うへに露ぞをくなる天の川とわたる舟のかひのしづくか となんいひていき出たりける 六十 昔。男有けり。《振り仮名:宮仕いそがは|なり平奉公にいそかはしき也》しく。心も《振り仮名:まめならざり|しんじつにも思はぬ也》ける程の。家 《振り仮名:どうじ|妻の事也》。まめに思はんと云人に付て。人の国へいにけり。此男うさの使 にていきけるに。ある国のしぞうの官人のめ(妻)にてなん有と聞て。女 【左丁・上段】 右の方へかへるべし。てうし みぎへかへらは。ひさげは左へ 帰るべし。本しやくはむすべ どもくわへはもとのごとくと いふは此ゆへ也。錫子(すゞ)にて酌(しやく) する時は。すぐのそこを両の 手にてかゝへてつぐなり てうしくわへ。 【挿絵】 すゞ  てう花かた 【左丁・下段】 あるしにかはらけとらせよ。《振り仮名:さらずはのまじ|内義の盃ならすはのむましと也》といひけれは。かはらけ 取て出したりけるに。さかな成けるたちばなをとりて 古今   さ月まつ花たちばなのかをかげば昔の人の袖のかぞする といひけるにぞ。《振り仮名:思ひ出て。|もとの夫と思ひて也》《振り仮名:あまに成|面目なしと思ひて也》て山に入てぞ有ける。 六十一 むかし。男つくし迄いきたりけるに。是は色このむといふ すき物と。すだれのうちなる人のいひけるを聞て 拾遺   染川をわたらん人のいかでかは色になるてふことのなからん 女返し 後撰   名にしおはゞあだにぞ有べきたはれ嶋波のぬれ衣きるといふ也 六十二 昔年頃音信ざりける女。心かしこくやあらざりけん。《振り仮名:はかなき人|なかふとのいふにまかせ》の ことにつきて。人の国成ける人につかはれて。もと見し人の前に出きて 物くはせなんどしけり。よさり《振り仮名:此有つる人給へと|きうししたる女をなり平所望せし也》あるじにいひ けれは おこせたりけり。おとこわれをばしらずやとて   いにしへの匂ひはいづら桜花こけるからとも成にけるかな