翻刻
【右丁・上段】
【挿絵】
【右丁・下段】
といふを《振り仮名:いとは|女の心に也》づかしと思ひて。《振り仮名:いらへも|返事せぬ也》せてゐたるを。などいらへも
せぬといへば。涙のこぼるゝにめも見えず。物もいはれずといふ
是や此我にあふみをのがれつゝ年月ふれどまさりがほなき
といひて。きぬぬぎてとらせけれど。すてゝにげにけり
いづちいぬらんともしらず
六十三
むかし。《振り仮名:世心つける|色このむ心つける也》女。いかて心なさけあらん男に。あひえてしがなと
思へどいひ出んもたよりなさにまことならぬゆめゆめがたりをす。子三人(ミタリ)を
よびてかたりけり。ふたりの子は《振り仮名:なさけなく|見くるしく思へるなるへし》いらへてやみぬ。さぶらう成け
る子よき御 ̄ン男ぞいでこんと《振り仮名:あはする|夢合する也》に。此女に。此女《振り仮名:けしき|よろこふ也》いとよし。《振り仮名:こと人|三郎か心也》は
いとなさけなし。いかで此在五中将に《振り仮名:あはせ|わか母を》てしがなと思ふ心あり
《振り仮名:かりしあ|なりひらかりして也》りきけるに《振り仮名:いき|三郎也》あひ道にて《振り仮名:馬の口|なり平の馬也》をとりて《振り仮名:かう〳〵|かやう〳〵に母の思ふ》
なん思ふといひければあはれがりて《振り仮名:きてねに|なり平ゆきて也》けり。さて後男見へ
ざりけれは女男の家にいきて。かひまみけるを。男ほのかに見て
【左丁・上段】
さかづきをとる事は。みぎの
ひざをかさね。左の手をつき
右の手にて盃をとり。そと
いたゞきのみ給ふべし。さかな
は右の手にうけ。はながみ
をとり。折ながら其中へ入
わきにをき。立申時もちて
出べし。のみたる盃を。だい
の上にをくべからず。だいの右
のかたに。たゝみのうへにをく也
しやく人とりてだいにすへて
むかふへまいらする也。さかなは
何よりも手のよごれぬ物を
すこしはさみて。はしをむへ
かふの方にをくべし。我方へ
をくべからず
【左丁・下段】
【挿絵】