翻刻
【右丁・上段】
物くふべきしだい
一ぜんのつけめ
《割書:是はせんをすへる時きうじ|する人に目を付まじき也》
一せんのわたり目
一さいのわたりぐひ
《割書:さいを二いろも三色もくふ|ましき也》
一まめのよこばし
《割書:まめにかざらずよこばしに|くふは見ぐるしき也》
一はしをと 一口おと
一はしのふりよごれ
物くふははれがましきもの
なりつね〴〵きを付てたし
なむべきこと也。しるわんの内
くひさかして見ぐるし。惣じ
て男らしくないやうにし
し■るしく見ゆるがよき也
【右丁・下段】
百とせに一年たらぬつくもがみ我をこふらし面影にみゆ
とていでたつけしきを《振り仮名:見て|女がみて也》。《振り仮名:むば|いはら也》らからたちにかゝり
て。《振り仮名:家にきて|女わか家にかへりきて也》うちふせり。おとこかの《振り仮名:女のせしや|なり平もかいまみたる也》うに忍ひ
てたてり【諸本には「て」あり】見れは。女なげきてぬとて
上句古今
さむしろに衣かたしきこよひもや恋しき人にあはでのみねん
とよみけるを。男あはれと思ひて其夜はねにけり。世の仲の
れいとして。思ふをは思ひ。思はぬをは思はぬものを。此人は思ふ
をも思はぬをも。けぢめせぬ心なん有ける
六十四
むかし。おとこ女みそかにかたらふわざもせざりけれは
いづくなりけん。あやしさによめる
吹風に我身をなさは玉すだれひまもとめつゝ入べき物を
かへし
とり留ぬ。風には有とも玉すだれたがゆるさばかひまもとむべき
六十五
昔。大やけおぼしてつかふ玉ふ女の。色ゆるされたる有けり。大みや
【左丁・上段】
うふやのかさり
【挿絵】
【左丁・下段】
《振り仮名:す所|染殿の后也》とて《振り仮名:います|おはします也》かりける。いとこ成ける殿上にさふらひける在原成
ける《振り仮名:男|なり平也》の。まだいとにかゝりけるを。《振り仮名:此女|二条の后也》あひしりたりける男女がた
ゆるされたりけれは《振り仮名:女の|二条の后也》ある所にきて。むかひをりければ女いと
かたはなり。身もほろびなん。かくなせそといひけれは
新古今
思ふには忍ぶることぞまけにけるあふにしかへばさもあらはあれ
といひて。《振り仮名:ざうしに|女ほうの房也》おり玉へれは。例の此みざうしには人のみるをもしら
てのほりゐければ。此女思ひわびてさとへ行。されは何のよきことと思ひ
て。いきかよひければ。皆人聞て笑ひけり。《振り仮名:つとめて|つぎのあした也》とのもづかさのみるにくつ
とりてをくになけ入て《振り仮名:のぼり|御殿にのほる也》ぬ。《振り仮名:かくかたはに|かやうに放埓のさまにて有わたる也》【諸本「し」あり】つゝ有わたるに。身もいた
づらに成ぬべけれは。《振り仮名:つゐにほろひぬへしとて|二条の后のさきの詞にて思ひ合わせし也》。此男いかにせんわか
かゝる心やめ
玉へと。仏神にも申けれどいやまさりにのみ覚えつゝ。猶わりなく恋しうのみ
覚へけれはおんやうじかんなぎよびて。恋せしといふはらへの具してなん《振り仮名:いきける|川辺へゆく》
はらひけるまゝにいとゞかなしきこと数まさりて。有しよりげに恋しくのみ覚へけれは