翻刻
【右丁・上段】
さん所のてい
【挿絵】
【右丁・下段】
恋せじとみたらし川にせしみそぎ神はうけずもなりにけるかな
といひてなんいにける此《振り仮名:みかど|清和帝也》はかほかたち。よくおはしまして
仏の御(ミ)名を御 ̄ン心に入て。御 ̄ン声はいとたうとくて。申玉ふを聞て女
はいたうなきけり。かゝる君につかうまつらで。《振り仮名:すくせ|さきの世也》つたなくかなしき
こと。此男にほだされてとてなんなきける。かゝる程にみかど聞し召つけて
《振り仮名:此男をはながしつ|なり平流されしこと国史に見へす》かはしてげれは。此女のいとこのみやす ̄ン所。《振り仮名:女をはま|きん中を出す也》
かでさせて。くらにこめてしほり玉ふけれは。くらにこもりてなく
古今
あまのかるもにすむ虫の我からとねをこそなかめ世をは恨みじ
となきをれば。此男は人の国より。夜ごとにきつゝ。笛をいと面白く吹
て声はおかしうてぞ哀にうたひける。かゝれは此女はくらにこもりながら
それにぞあ ̄ンなるとは聞と。あひ見るべきにもあらでなん有ける
さりともと思ふらんこそかなしけれ有にもあらぬ身をしらずして
と思ひをり。男は女しあはねは。かくしありきつゝ人の国にありきてかくうたふ
【左丁・上段】
女は人に嫁(か)してより。懐(くわい)
妊(にん)の事を心にかけ。つね
に夫(をつと)にまじはる時たしなむ
べし。風雨はげしき時には
かみなり。地しん。仏神の
像(ざう)のまへ。かやうの所をけがさ
ぬやうにすべし。此つゝしみ
なけれは。かならず難産(なんざん)に
して。子もたん命(めい)か。病(やむ)か
かたはものかをうむ也。かたく
おそるべし。扨まさしく
くわいたいとしるならは。心に
神仏をたのみ。ずいぶん信
をなし。心を正直(しやうじき)にして目に
あしきものをみず。いかりを
止さず。聖人(せいしん)賢人(けんじ)のをしへ
【左丁・下段】
【挿絵】