東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

伊勢物語大全 - 翻刻

伊勢物語大全 - ページ 7

ページ: 7

翻刻

【右丁・上段】   九月 薄(すゝき) 鶉(うづら) 花ずゝき草のたもとの  つゆけさをすてゝ   くれゆく秋の    つれなさ 人めさへ  いとゞふかくさ かれぬとや  ふゆまつ しもにうづら  なくらん   十月 残菊(ざんきく) 鶴(つる) かみな月しも夜のきくの にほはずは秋のかたみに なにをかさまし 夕日かげむれたる  たづはさし   ながら しくれの    雲ぞ  山めぐりする 【右丁・中段】 五行(ごぎやう)の歌(うた) 定家卿(ていかけう)   木(き) 国とめるたみのかまど のけふりにもとやまの 木々(きゞ)のえだぞしらるゝ   火(ひ) ふかき夜のみちにさき だつまつの火のひかりを おくるちぎりばかりや   土(つち) わきそめしはじめもし らずあらかねの土より なれる四方(よも)のうみ山   金(かね) しもさへて月かげしろ き風のうちにをつ【のヵ】が 秋なるかねのおとかな 【右丁・下段】 ○たそかれ時のまぎれにほの〴〵見へてさけるは こいゑがちなかのきのつまにあまりてかゝろ夕/貌(かほ) ○むさしのもさらしなもすまやあかしのおもかげ もうつしてこゝにこる【「みか」では】月のながめはいつもひろさわ ○ゆめにばかりよな〳〵思ふ人をみちのくのなこそ のせきをたがすへてうつゝに事もかよはず ○恋〳〵てこひ〳〵て恋しき人をまつら#1山まつ らん物を行てみんゆきていざやあひ見ん ○あかしかねたるしもよのとこもさびしきあ らしのおとはそよ〳〵さら〳〵降(ふる)は霰(あられ)の玉ざゝ   ○雲井曲(くもゐのきよく) ○人め忍(しの)ぶのなかなれは思ひはむねにみちのくの ちかのしほがま名のみにてへだてゝ身をぞこがるゝ ○わするゝやわすらるゝ我身のうへは思はれであだな立 うき人のすへの世いかゞあるべき ○たまさかにあふとてもなをぬれまさる袂(たもと)かな 【左丁・上段】   十一月 枇杷(ひわ) 千鳥(ちどり) 冬(ふゆ)の日は木草のこさぬ しものいろをえだの はかへぬ花ぞ     まがふ 千鳥(ちとり)なく  かもの   かわせの よはの月   ひとつに みがく山  あひのそで   十二月 早梅(そうばい) 水鳥(みづとり) 色うづむ   年の  梅がゝ  かきねの    こなた   雪のころ    にゝ□【ほヵ】ふ      なが【「ら」脱ヵ】   ながめする池の  こほりに    ふる雪      の かさ   なる     としを をしのは衣 【左丁・中段】   水 ゆくゑなき山のしづくの つゆばかりながるゝみつの すゑのしらなみ 五色(ごしき)の歌(うた) 定家卿(ていかけう)    川竹のはしのいろ 《振り仮名:青|しやう|あをし》 にまがふかなたまのすだ    れにかゝるあふひは    えだかはすきしのやま 《振り仮名:黄|わう|きいろ》 ぶきはなちりてあかね    の露になみぞこへける     しぐれつるくもゝひかげ 《振り仮名:赤|しやく|あかし》 にそめられてもみぢを    おろすみねのこがらし    しらくものやへたつみねの 《振り仮名:白|びやく|しろし》 やまざくらそらにもつゞ    くたきつかわなみ ( )    むばたまのやみのうつゝ 《振り仮名:黒|こく|くろし》 にかきやれどなれてか    ひなきとこのくろかみ 【左丁・下段】 あすのわかれをかねてよりおもふ泪(なみだ)をさき立て ○あめのうちのつれ〳〵むかしを思ふ折からあはれ をそへてくさの戸をたゝくやまつのさよかせ ○身はうきふねのかぢをたへよるべもさらにあらいその いわうつなみのをとにつれてちゞにくだくる心かな △それ琴(こと)を桐君(たうくん)。桐孫(たうそん)。弦桐(げんたう)。落露(らくろ)。雲和(うんくわ)。清客(せいかく) とてあまたの名ありしらべおぼへてくもゐの調(しらべ) 又は二/上(あが)り三/下(さが)りしな〴〵はならひてしるべし 糸(いと)い数はむかふより一とかぞへ十一を調(と)といひ十 二を音(いん)といひ十三を琴(きん)といふなりいまだりんぜつ もさだかならず五三四のすがゞきもまだ糸(よ□)なれ ぬ女(め)の童(わらは)もすべて琴(こと)によりそへばならひなくて琴(こ) 音調(ろり)十(しやん)とひきもとより此みちの上手(じやうず)も第一 これをしらぶる事されば斎宮女御(さいくうのにようご)の 琴(こと)の音(ね)に峯(みね)の松風かよふらじいづれのおより調初(しらべそめ)けん と読(よみ)し哥糸三筋(うたいとみすじ)の内にこもりて琴(こと)に通(かよひ)し名哥(めいか)也