翻刻
【右丁】
文臺雅調
散のこるたくひならすて咲初てまはらなる花はうれしな
信楽 花鳥屋
今日あすと春の月日のすくる如木つたひてゆくうくひすの声
岐阜 神垣内
まち〵し春し来ぬれは又さらにまたれにけりな花のさかりを 高津戸 信経
春来れは野へも沢辺もかすみけり若菜つむ子の袖もみとりに
秩父野上 小松
山寺はよしとかめすもはつ桜たしなき花をいかてをるへき
熊谷 不知瀬
なくさめし目をよこさしと散花のあはれを風の誘ひゆくらむ
鹿沼 吉明
香に匂ふ梅をあるしにゆるされて折はくたてや花はちりける
成田 文彦
あなにくの梅のにほひや匂はすは人もとひ来て折はさましを
潮来 守居
何にこの花はうゑけむ雨につけ風につけつつなけき多きを
天童 調歌堂
誰夢によへや女と見えつらんかをりえならぬ梅の朝風
仙台 千菊園
【左丁】
十
よき事もなきにはしかぬ家桜さけはみ【「集」では】ゆゑ枝をられけり
仝 綾信
人来とていとふもあるを嬉しくも花を見にことよふこ鳥かな
漫唫社
我宿のさくらなれともちる時は心にえこそまかせさりけれ
輝條
さくら狩あすの日和をうらとへは【占問へば】夜も燈火の花くもりしつ
輝城
きのふ見し人ありとしもしらすしてけふ見る我はけふの初花
琴音
ここらさく花見のむれにいとはれて春柳にのみふくか春風
近国
雪に香をしのふる梅もおもふにはまま?【「まくら」ヵ】ならひと匂ひそめけり
滝澄
夏 十五
いかなればはかなきものにたとへけむ露こそ夏の艸の玉の緒
至清堂
心ありてたてし家ゐは庭にさへ常夏をこそむねと栽けれ
仝
ほとゝきす待夜の雲間もれ出て月は烏をなとなかすらむ
璦
文臺雅調