翻刻
【右丁】
村しくれ晴て露おく松の葉をしはし夕日に紅葉なしけり
金原 定住
八
九重の高き屋とても瓶の水氷て民の寒さこそしれ
宮サキ 千可信
都にて雪見車のかよふろち目をとゝろかす水仙の花
三条目 真波
み仏にかたちつくれは法の師のかつきし綿とみゆる白雪
竹杜 津喜影
見わたせは昨日の秋の色もなくふしの根白し雪の明仄
天トウ 文好
川風にきしの枯蘆折敷てなかれもあへぬ雪をみる哉
同 よし鷹
雪をしも花とやみらんくるはすて寒きのとはぬ戸さし守る犬
小松 真竹
冬は猶目にたつこともいとさひし風も音せすちれる木々の葉
同 末広
ふる雪に春のおもかけみゆはかりちりかふ花に似たる吉野路
一本柳 小瓶
はゝきをもとらせす庭の雪をみんけふは異国の元日の朝
上ノ山 真薫
とはすとも神の留守ともしられけりぬさと手向る紅葉たになし
同 真影
八千くさの限りしられぬむさし野もかれてことしの果をみせけり
大道 夢盛
ちり尽し木の葉なかれて行末は海にのみきく木からしの音
盛岡 广守
おく霜のしろさとけさはみえにけり神のみまへのあけのみはしも
仙タイ 染好
【左丁】 三十一
松風のしくるゝ夜はゝ木の間もる月かけさへそやとり定めぬ
仝 三千年
風さそふ峰の木の葉は飛散てしくれならねと山廻りしつ
気仙沼 好之
あらしする風のやとりを埋めんか雪ふりつもるみねの松かえ
荒マ 友成
八重むくら枯たつ冬の浅茅原つはらに寒きけしきとそなる
白川 玄遠
小夜ふかくなるみの海にいとゝしく群袖しほりてなく水鳥哉
塩子 仲住
ふる雪を池の面にもつまんとや氷は水をやらひそむらん
善光寺 長房
日数さへはたち重ねてふる雪に猶たけ高きふしの山すえ【ママ】
仝 玉兎
月かけのみえみ見えすみふる雪は桂の花のちるにや有らん
大坂 雪雄
めつるかとしはしみ空にたゆたふや一しきりしてをやむ初雪
仝 菊守
水底にみねの雪みる田子の浦世にならひなき不二の移りて
長浜 里塔
飛鳥川かはる淵瀬にをし鳥はうきねの床を定めかぬらん
明石 信孝
み空にもふれる中はをつきてまし雪にあたなる日を埋むかに
兵庫 江居
雪つまは折れもやせんと吹風のかねて木の葉を散すなるらん
同 亀石
寒けさに手飼の猫の身ふるひも白き毛こほす雪の明仄
名古屋 便々居
文雅